267:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/02/02(水) 22:42:59.06 ID:v39FFWdbo
「なんつーかよぉ。オマエ、似てるんだわ。俺と」
「……アンタと? 私が? 冗談にしても笑えないわね」
「そう邪険にするなよ。別に同族嫌悪なんて言おうとは思っちゃねぇんだから」
苦笑して垣根は細められた目を麦野に向ける。
顔は笑っているが目は笑っていない。
そこに込められた感情は――哀れみだ。
(ふざけんのも大概にしろ……っ!)
侮蔑や嘲笑ならまだ我慢できただろう。だがよりによって憐憫。蔑まれるより性質が悪い。
麦野には垣根に哀れみの視線を向けられる覚えなどない。
確かに麦野は決して幸福とはいえない。
悪意と殺意が荒れ狂う学園都市の暗部に席を持つ彼女だ。お世辞にも幸せなどと誰が言えよう。
麦野とて何も好きで殺し殺されの世界にいる訳ではない。
この国のその他大勢の同年代は青春を謳歌しているだろう。
元より学園都市というこの街では特に顕著だ。何せ学生、若者のためにこそ存在する場所なのだから。
けれど麦野の場合少しばかり違っていた。
必死に生きていた。強くなろうとした。
この街では実力が物を言う。どう取り繕おうと現実は容赦なくその事実を突きつけてくる。
運もある。周囲の環境もある。その上で麦野は確かにその地位を得ていた。
だがその中で何故麦野沈利は『第四位』という座にあり、暗部に身を窶しているのか。
あえて言うならばそう、彼女は少しばかり不幸だった。
同族と垣根は言うが、だからこそ哀れまれる筋合いなどない。
それを言うなら垣根こそ。麦野よりも上位に格付けされる垣根こそ比較にならぬほどの地獄に身を浸しているに違いないのだから。
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