286:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/02/05(土) 01:00:34.60 ID:K6nTd4fDo
「…………何よ、なんだよそれ」
しばらくの沈黙の後。
怒りなのか、悲しみなのか、麦野は感情に顔を歪めながら押し殺したような声を吐いた。
「そんな年にもなってヒーローごっこかよ。さしずめ私は悲劇のヒロインか? 笑わせんな。
勝手にズリネタにすんのはまだいいにしても下らないオナニーに私を巻き込むんじゃねえよ」
相変わらずの悪口。だが垣根は表情を変えぬままじっと麦野を見詰めていた。
「頼むから他に迷惑かけんなよ。私ら弄んでそんなに楽しいか」
ああ、コイツは本当に悪魔だ。
どれだけ言葉を取り繕おうと言っている事は毒にしかならない。
「なあ、垣根。オマエ何がしたいんだよ。……マジ訳分かんねえ」
そう吐き捨てるのがやっとだった。
麦野は理解している。ここはそんな綺麗事が許されるほど温い世界ではない。
一度落ちたら逃げられぬ屍山血河。吹き荒ぶ風は鉄錆の臭いしかせず、纏わり付く血と汚泥は拭えるはずもない。
そんなのは言うまでもない歴然とした事実。大言壮語にも程がある。
でも。
『でも』。『だからこそ』。
そんな場所にいる者に僅かでも希望を見せてしまえば縋り付いてしまうのは分かっているだろうに。
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