39:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/09(日) 15:07:35.19 ID:ebftp9go
手を伸ばす。指先が透明な壁に触れた。
指紋が付いちゃうな、と思いつつ軽く指先で掻くように冷たく硬い感触をなぞった。
「これね、ガラスじゃないの。電磁波とか遮断する特殊な素材でできててさ……。
私ってばほら、こういう能力じゃない。体から常に無意識に微弱な電磁波発してて、それをこの子たちが嫌がるの」
だから、と。それに続く言葉は言えなかったけど。
いくら察しの悪いアイツでもきっと伝わっただろう。
透明な壁のむこうにいる子猫はきょとんとした無邪気な顔で私を見上げてくる。
けれど私はその視線に応える事ができなかった。
得体の知れない罪悪感が私の目を逸らさせる。
純粋無垢なその美しい瞳が、どうしてだか私を責めているように思えて仕方なかったのだ。
私がこの子たちに何かしたわけではない。
だから私がこの子たちに感じるものは錯覚でしかない。
けど、檻の中で何も知らずに人間のエゴによって売買される彼女らを私はあの子達に重ねてしまう。なぜならあの子達も――。
それ以上考えたくなかった。
私は立ち上がり、アイツに向き直って精一杯の作り笑いを見せた。
「うん。そろそろ――」
他の場所へ。私にはこれ以上あの子たちの無垢な視線に耐えられる気がしなかった。
そう言おうとした私の口は、しかし思わぬ事態により続く言葉を失ってしまう。
ぎゅっ、と。
アイツが私の手を握ってきた。
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