43:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/09(日) 15:13:59.12 ID:ebftp9go
動揺する私にアイツはもう一言だけ付け足す。
「手、離すなよ」
その言葉の意味を理解して私はようやくアイツが手を繋いできた意味を知った。
そう。アイツはどうしてだか私の能力がまったく通じず、なぜだか分からないけど根こそぎ無力化させてしまうという理不尽な能力を持っている。
それを今、私に向かって使っているのだ。
今の私はなんの異能も持たない極々普通の少女になってしまっていて、それはつまり――今、私の体から電磁波は出ていない。
そりゃあアイツが特別な意味もなく私の手を握る事なんてあるはずがないと分かってはいたけど、ちょっぴり寂しい。
でもそれ以上に嬉しかった。アイツは手を繋ぐだけという単純な動作で軽々と私の苦悩を吹き飛ばしてみせた。
私が壁越しでなくとも子猫を見られるように。触れるように。他でもない私のために。
触れられる。手を伸ばせばいい。それだけだ。
なのに私はどうしてか硬直してしまっていて身動きがとれずにいた。
けれどアイツはそんな私の様子に気を配るはずもなく、しゃがみ込んで低い柵の上から手を伸ばし子猫の頭を指先で掻いた。
彼女は気持ちよさそうに目を細め少しだけ口を開く。真っ赤な口内に小さいけれど鋭い牙が見えた。
「おおう、愛い奴め」
猫を飼っているというのだからこういうのはお手の物なのかもしれない。
慣れた感じに指先で子猫をくすぐるアイツの表情に私は目を奪われる。
少し嫉妬もしていたのかもしれない。子猫相手にバカバカしいと思うかもしれないけど。私はその笑顔を自分に向けて欲しいと思ってしまっていた。
その感情の名を私はまだ知らない。
心中で渦巻くモヤモヤとした気配。
でももう少しで答えが出そうな気がした。
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