679:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/18(水) 21:05:31.36 ID:32iMxubGo
「よく私の能力を知ってるわね。結局、アンタの思考が読めないのと関係してるのかしら」
「それについては体質のようなものだ。あまり気にしないでくれ」
「まさかはいそうですかって納得できると思う?」
「納得してくれ。詳しい説明をするのは面倒だ。……魔術や秘蹟の存在を信じるか?」
怪訝な顔をするフレンダにそれ見た事かとばかりに彼女は肩を竦める。
「オマエの事を知っていたのは、たまたま私が裏切った組織にその関係者がいたからだよ」
「関係者って……」
「『博士』と言えば覚えがあるか?」
「あー……」
その代名詞で呼ばれる者は数多くいるが、固有名詞として用いるならば一人だけ心当たりがあった。
爬虫類のような冷たい眼をした、白衣を着ている姿しか思い出せないような男だ。
『アイテム』の要となっている薬品――能力体結晶の開発に従事していた研究者の一人。
フレンダ自身がその実験に少なからず関わっている。ともなれば能力を知られていても当然の相手だった。
「アイツね。何、結局まだ懲りてなかった訳」
「まだ?」
「前に年甲斐もなく私に言い寄ってきたからフってやったの」
「……そういう感情があるような男には見えなかったが」
「研究材料としてよ」
納得した様子でショチトルは頷く。
どうにも会話のテンポが悪いとフレンダは思う。
相手の感情が見えないからだろうか。
いや、そんな事はない。自分の社交性はそこまで能力に依存したものではないはずだ。
と、そこまで考えてようやく気が付く。
(ああそっか……単に不安なだけなんだ)
ある意味では対人における絶対の切り札ともいえる能力。
依存こそしていないものの、『心理掌握』の通じない相手を前にしてようやくそれを拠り所としていた事に思い至った。
(結局、一番相手を信じられてないのは私自身じゃない)
何の因果だろうか。本当にろくでもない能力を開花させたものだ。
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