過去ログ - 佐天「嫁にして下さい!」 一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
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548:貧乏螺子 ◆d85emWeMgI[saga]
2010/12/29(水) 01:35:08.21 ID:TW5Selw0

もし、仮に垣根帝督にプライドがなかったら。
もし、仮に垣根帝督がもっと無神経な男だったら。
もし、仮に垣根帝督がもっと諦めの良い男だったら。

すべてが既に片付いていただろう。羽虫を潰すように佐天を瞬きする間も与えずに殺していたはずだ。
木原数多のような、救い様のない外道、生まれながらの邪悪、自ら望んで墜ちた者ならばそうしていただろう。
しかし、垣根帝督はそうではなかった。彼は墜ちざるを得なかった者だ。
許されざることに手を染めるという自覚を持ち、その結果を受け入れ、更に深みに落ちることを理解し、行いを正すことを拒んだ。
その選択をしたのは紛れもない彼の意思であり、彼は納得した上で悪に染まった。
彼は善人でもなければ、特別優しい人間でもない。
しかし、それでも尚確かなことは垣根は自ら望んでその選択をしたのではない。
その選択肢しか知らなかったのだ。

故に、戸惑う。

だからこそ、怯む。

佐天の姿に、その後ろに、あり得たかもしれないものを視る。
一方通行と同じように、垣根帝督もまた佐天涙子に憧れを見る。



「ハ………ンだよォ……そンなことだったのかよ」



苦笑交じりの声が静かに透き通るように響いた。
それは確かめるまでもなく、一方通行の声だ。
しかし、彼の目は驚きに見開かれる。
それは佐天も同様である。
視線の交わる先、それは一方通行の背 ―――― から噴出す黒い翼。
初めて見るソレに、佐天は純粋に驚いていたが、垣根は違った。
嘗て目にした、ぞじて自分を屠った黒い翼は、怒り、憎悪、殺意を噴出剤にするような炎の如き代物であった。
しかし、今目にしてるものは違う。
ゆらゆらと冬の空の下で揺れる湖面のように穏やかなもの。
自分の知るものとは全く異なるものだった。




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