440:貧乏螺子 ◆d85emWeMgI[saga]
2011/01/21(金) 21:58:05.28 ID:fSpuMihf0
「止めろよ……バカ」
打ち止めはその言葉を聞き終える前にとんと軽い衝撃と共に一方通行の腕の中に納まっていた。
顔を上げると、一方通行は目元を片手で抑えていた。
泣くまいと、赤い瞳に力を込めて堪えている。
それでも声は震え、彼は唇を噛むことで溢れる衝動を抑え込む。
「お前はいつまでも俺の家族だ。何か辛いことがあったらいつでも呼べ。
世界中の何処からでも駆けつけてやるよ。お前を助けに行ってやる」
彼の言葉と、久しぶりに間近で感じる彼の匂いに、打ち止めは泣き出してしまいたくなる。
大好きな彼の匂いだ。
心音が聞こえる。そっと背中に腕を回す。
愛しさと、切なさが溶け合って心を激しく揺さ振る。
打ち止めは、薄い一方通行の胸に手を置きながら、そっと顔を上げる。
「一方通行……」
ヒールを履いていても、尚背伸びが必要な身長差。
それは、そのままに二人が歩んできた年月の積み重ねのようで。
それを乗り越えようとするように背伸びをする。
「ん ――― 」
そっと薄いルージュの口付けを一方通行の唇 ――― のギリギリ横に落とす。
離れると、顔を林檎のように染めた一方通行の表情。
その顔に、少しだけしてやったりと、笑みが零れる。
最後の口付けは、やっぱり唇に落とすことが出来ず、打ち止めはこっそりと笑みを浮かべる。
最後まで勇気を出せない自分への自嘲なのか。
往生際の悪い真似をせずに済んだことへの安堵なのか。
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