過去ログ - 上条「だからお前のことも、絶対に助けに行くよ」一方「……」
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323: ◆uQ8UYhhD6A[saga]
2011/01/04(火) 23:45:13.97 ID:6HfT1jco



幸いなことに―――結果的には、だが―――二階にもまともな明かりはついていなかった。
いや、もしかしたら『こう』なる前はちゃんとついていたのかもしれない。けれど、『こう』なる過程で破壊されてしまったのだろう。
暗闇の奥に見え隠れしている血の海から、美琴は苦い顔をして目を逸らした。
……覚悟はしていたが、これほどまでとは思わなかった。それ程までに凄惨な惨劇が、二人の目の前には広がっていた。

部屋には窓が無く、薄暗かったのが幸いして、二人は決定的なものを見ることなく壁伝いに先へと進んで行く。
この廃屋は三階。この様子を見る限り二階にいた人間は全滅しているだろうが、三階にはまだ誰かいるかもしれない。
だから、確認しなければならなかった。

二人は時折現れる壁に張り付いた死体を避け、目を逸らし、意識を向けないようにしながら、次の階段へと向かっていく。
当然ながら、彼らは終始無言だった。
気を紛らわす為に何かを喋ろうという気にもなれない。



そうして見つけた階段を、二人は慎重に登っていく。
もしこの上にこの惨劇を引き起こした犯人がいるとすれば、それは相当の実力者だ。
美琴でも、油断をすればただでは済まないかもしれない。
だから二人はせめて相手に自分たちの接近を悟られないように、必死で息を殺して足音を抑えながら先へと進んで行った。

そして、先頭に立っている美琴が最後の段に足を掛けようとした、その時。
扉が半開きになっている一番奥の部屋から、だあん、と何かを地面に叩き付けるような音が聞こえてきた。
誰かがいる。
二人は確信した。
誰かがいて、誰かを襲っている。
そして惨劇の続きを作り出そうとしている。

相手が如何にテロリストと言えど、あんなに酷い死体にされるのを黙って見ていることなんて、できない。
美琴は慎重に行かなければならないということも忘れて、全速力で駆けた。
そして、半開きになっていた扉を勢いよく押し開ける。
部屋に飛び込み、いつでも能力を発動させることができるように構えた。

……しかし。
そこにいたのは、地面に這いつくばって鼻や口の端から血を垂らしている見知らぬ男と。
白い髪に赤い瞳をした、彼女のよく知る少年だった。


「一方通行?」


思わず、美琴はその名を口にした。
少年が振り返る。
見間違えるはずもない。間違いなく一方通行だった。



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