過去ログ - お題を安価で受けてSSスレ
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925:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[sage]
2012/03/18(日) 05:44:12.52 ID:SpA8ZXHAO
>>922



この病院に入院してもう二十年近い。人間とは不思議な者で死なないと思っている人間の方が圧倒的に死にやすく、今日にも天からお迎えがくると身構えていた方が長生きはするもんだ。
元気に騒いでいた爺も、百まで生きると豪語していた爺もいつの間にかあっさりとその生を終えて逝った。
「なぁ、ナース」
人を名前で呼ばない偏屈爺として有名な儂はいつも余計なお世話に来る若い女に声を掛ける。
「あら、珍しい。お爺さんから声をかけて貰うなんて」
「頼みがある……」
儂は独身者であるが故に女性を嫌っていた。
男尊女卑。古臭いと言われようと戦前はその考え方が当たり前であり、男が頭を下げるなんて言語道断だった。
「ケベって知っとるか?」
「けべ?」
「ふらんすって国のベッドなんじゃよ」
興味が無いのか、隣のベッドの男の子の点滴を変えながらてきとうに相槌を打たれる。
「えろう寝心地がいいらしくての……このベッドをそれにしてくれんか?」
「またまた、無茶言うんだから」
苦笑気味に言われる。
が、儂の思いは燃え上がるばかりーー
「頼む、ナース、儂のお願いじゃ」
「っ!? も、もうっ。お爺さん!? 急に掴まないでください」
「…………駄目かの」
肩を落として呟く。
「…………もし、ですよ。そのベッドにしてくれたら……お爺さんは私を好きになってくれますか?」
「なっ……」
絶句する。孫どころか曾孫くらいの年の差があるおなごが顔を真っ赤にしてそんな事を言うのだ。
「じょ、冗談や嘘じゃないです……もしお爺さんがあたしを好きだって言ってくれるならーー」
顔を俯かせてそんな事を呟く。
「……長生きはしてみるもんじゃの」
いつ天から迎えが来るかそんな事を考えていた毎日だった。
けれども今日からは生きる気力が湧き上がる。
「ケベじゃ、ケベ!!」
「もう、はしゃぎすぎです……」
その時ーー心臓に鈍い痛みが走る。
「うっ…………ぐぁっ」
「お爺さん!?」
なるほどーーもう、そんな時間なのか。
儂は最後にナースの手を取る。








「なぁ…スケベしようや…」


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