31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:51:18.80 ID:IClwZiHj0
以前気絶しっぱなしの朝比奈さんを背に負って歩く俺の、隣を古泉は歩いていた。
いわく、心苦しいがいざという時に自分は戦わなければならない為に朝比奈さんを背負っては歩けないとの事だ。いや、今しがたまで謎のホラー美女と大立ち回りやらかしてたヤツにそこまでさせるのは流石に俺だって出来ねえよ。
それに、ま、これはこれで役得ってヤツだしな……現状が緊急事態でさえ無ければ表情筋を一筋残らず弛緩させていてもおかしくはない。
しっかし、去年の七夕(正確には四年前の七夕になるのだろうか)以来だよな、こうやって朝比奈さんを背負うのも。
なんかちょっとした既視感だぜ。
「なあ、古泉」
「はい、なんでしょう?」
「さっきの、赤神オデットさんだっけ? あの人はあのまま放置しといて大丈夫なのか? ウェディングドレスっつーのは着たこと無いが」
着た事が有ってたまるか。着る予定も無い。
「どんくらい暖かいか知らんし、真冬に放置して凍死されてたりしても寝覚めが悪いんだが」
俺がそんな事を言うと古泉は笑った。
「ふふっ。貴方は本当にお優しいのですね」
「そんなつもりはねえけど。だが、少年Aにはなりたくないぜ?」
今しがた殺されかけた相手に対して何言ってんだ、ってのは分かる。分かるけど、それにしたって……なあ。殺されるのも嫌だが殺 すのだって同じくらい嫌だ。普通の感覚だよな、コレ?
「機関には連絡してあります。空間製作……今、この裏路地は少々特殊な状況になっているのですが。しかし、それにしても魔法ではありませんので彼女が凍死する前には回収も済むかと」
「そうかい。ああ、そうそう。その空間製作ってのに関して俺はまだ聞いてないぜ?」
一体どんなシロモンなんだ? やっぱり閉鎖空間だとか局所的非侵食……なんだったかな、ごちゃごちゃした名前の長門が創るアレ。あんなんの類似品か?
「空間製作……そうですね。どうやって説明したものでしょうか。貴方は富士の樹海ではコンパスが狂うという話をご存じですか?」
「あー、聞いた事くらいは有るな」
確か、その樹海の土やら石やらが磁力を持っていてそれでコンパスがぐるぐると迷子になっちまうんだっけか。
「ええ。同様に磁力は人の方向感覚にも微細にでは有りますが作用します。ただ……微細ではあれ微に入り細に入りすればそれは十分に人から方向感覚を失わせる事が可能です」
「つまり、磁力が原因なのか」
そりゃまた学園異能バトルみたいな話だな。磁力怪人でも出て来るのかよ、次は。
「原因の一部、ですね。他にも色々な技術を用います。例えばあのゴミバケツ。一見何の変哲も無いものですが道を二度曲がって、その後にアレと同じものを同じ配置で見たら人はどう思うでしょう?」
「自分が同じ所をグルグル回ってると、そら思うわな」
俺が答えると古泉は一度指を鳴らして、そしてピストル型にした内の人差し指を俺に向けた。芝居掛かってるにも程が有るだろ、その仕草。
「ええ。実際はまったく同じものが二つ用意されていただけにも関わらず。そういった人間の錯覚心理、その他諸々を利用して人を遠ざけ人を誘導し、自分の思い通りのシチュエーションを創り出す。それが空間製作技術です」
なるほど。魔法じみちゃいるが、その中身はどっちかっつーと粋を凝らした手品の枠内ってこったな?
「はい。閉鎖空間や長門さんお得意の局地的非侵食性融合維持空間とはまるで別物です。そういった理解でいいでしょう」
そっちはびっくりどっきりくっきりはっきり魔法の類だもんなあ。ま、どっちにしろ非常識なのは変わりない。
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