過去ログ - キョン「戯言だけどな」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 19:23:56.94 ID:IClwZiHj0
「……アンタ、何モンだ?」

俺の問いかけに、ソイツは鼻を鳴らす。今、俺は何か面白い質問をしただろうか。そんなつもりはないのだが。
しかしてよくよく自分の発言を思い返して、それは確かに漫画かアニメのような気取った発言に聞こえなくも無い。やっちまったか、俺? 自意識過剰か非日常にどっぷり肩まで浸かり込んで日常パートにまでそういうのが侵食してきたのだとしたらコイツはもう笑えない話だ。
アンタ、何モンだ?
ああ、こんな台詞が一介の男子高校生から出て来たらそりゃもう大分危険な兆候だ。
だが、そんな俺の煩悶とは違った場所で男は面白みを感じていたようだった。

「何者……いや、本当ぼくは『何物』なのだろうね。君たちみたいに生き物を名乗ることすらおこがましいと、以前誰かに言われたよ。ただ、そんなぼくにもレッテルみたいなのは有るんだ。
『人類最弱』
まったく、人を馬鹿にするにも程が有ると、そうは思わないかい?」

「人類……最弱?」

「そうさ。ま、ぼく自身も認めるに吝かではないけれどね。脆弱で軟弱で惰弱で零弱で、総じて最弱。でも、このままだと呼びづらいかな。君とはこれから先も縁が『合』いそうだし。もう少し呼び易い呼称を教えておくよ」

その立ち姿は、とても俺には弱そうには見えなかった。どちらかと言えば芯の有る、強い針葉樹のように見えた。

「立てば嘘吐き座れば詐欺師、歩く姿は詭道主義。口を開けば二枚舌。舌先三寸にて行いますは三文芝居」

男はスポットライトの下、まるで映画のような見事なお辞儀を俺に向けて披露したのだった。

「戯言遣いとは、ぼくの事さ」

ソイツは言う。

「世界の危機が迫っている。だからぼくがここに居る。ああ、そうは言ってもぼくはどこかの『女の子の間でしか噂にならない殺人鬼』とは違うのだけれどもね」

何を言っているのかはよく分からなかったが、それでも「世界の危機」という下りだけは俺の心に引っかかった。普通に生きていれば、どこにでも居る俗っぽい男子高校生であり続けたならばきっと「戯言」の一言で片付けられた筈で。
今更ながらに自分の立ち位置が日常と非日常の狭間、とても不安定なステージである事を思い出す。

「……世界の、危機?」

「食いついたね。その目は聞き捨てならない、っていう眼だ。ああ、これで確信が持てた。君が、『鍵』か」

貴方が、鍵です。いつだったか古泉が俺にそう言った。
俺を指してそんな世迷言を言うのだから、目の前のこの男は真っ当な人間では、無い。咄嗟に俺が考えたのは古泉と同種の可能性。機関の工作員か何かか、コイツは?
いや、それにしたって機関のスポークスマンは古泉じゃなかったのか?

「ああ、そんな疑惑に満ちた目を向けないでくれないかな。男の子にそんな眼で見られても何も嬉しくないじゃん。そんな眼は三つ子のメイドさんがやってこそだとぼくは思っているからさ」

どうも話が噛み合わない。いや、煙に巻かれているような、捕らえ所が無いこの感じ。……率直に言って気持ちが悪い。


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