54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/02/03(木) 02:02:53.01 ID:ApuBWSEk0
『もしもし』
「あ、憂? 今、時間大丈夫?」
家に帰るや否や、私はアドレス帳のア行を辿り、憂に電話をかけた。
言うまでもなく、真偽を確認するために。
今、桜ヶ丘を賑わせている事件の犯人は本当に唯先輩なのか、という澪先輩の疑問を晴らすために。
正直、涙が出そうだった。
『うん、平気だよ。どうかしたの?』
「ちょっと憂に聞きたいことがあって……その、ちょっと聞きづらいことなんだけどさ」
『そうなんだ……あ、ちょっと待ってもらってもいい? 今、自分の部屋に移動するから』
これから私は憂の心に傷をつけるかもしれない。
いや、間違いなくそうなるだろう。だって、自分の姉があの悪戯の犯人じゃないかと勘繰られるのだから。
憂が唯先輩をどれだけ慕っているかは皆が知っている。
そして、憂が唯先輩をどれだけ心配しているかは私しか知らない。
『お待たせ。もう大丈夫だよ』
姉の凶行に心を痛めている憂に、私はこれから追い討ちをかけなくてはならないのだ。
思わず、ギリギリと歯軋りの音が零れた。
『梓ちゃん? もしもーし』
「……あっ、ごめん」
『……ねえ梓ちゃん』
「なに」
『梓ちゃんが聞きたいのって、お姉ちゃん事でしょ? そうだよね?』
苦笑いが零れる間もなく、私は心臓を締め付けられるような感覚に襲われ、眩暈がした。
ぼふっ、とそのままベッドへ倒れ込む。
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