76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/02/04(金) 04:12:12.96 ID:NOUrG0Tf0
その日、私は早退した。
こみ上げる嘔吐感も、目から零れ落ちる涙も、全てどうでもいい。世界が灰色に見えるって感覚、本当にあったんだ。
お客さん、つきましたよ。
タクシーの運転手に何枚かのお札を投げつけ、そのまま外へ這い出る。瞬間、地面に吐いた。
「……トンちゃん……トンちゃん……」
脳裏に浮かぶのは、地面に突き刺さる無数の棒。『スッポンモドキの墓』と書かれたアイスの棒。
胃液にむせ、その場で咳き込んだがタクシーは私を無視し、無情なエンジン音を響かせて去っていった。
「……トンちゃん……ぐすっ……トンちゃんトンちゃん……!」
涙で滲む視界。
吐瀉物の中に、バラバラになったトンちゃんの一部が見えたような気がして、思わず絶叫した。
ガラガラと気味の悪い音が喉から漏れ、それを聞きつけた母が慌てて家から出てきた。
よく覚えていないが、気がつくと自室だった。
気だるい感覚がじわじわと体を侵している。何もする気力がわかない。
どうしてこんなことになったんだろう。どうして私がこんな辛い思いをしなくちゃいけないんだろう。
どうして……。
「どうして……どうしてよ!!」
どこから湧いてくるのか、まだ涙は尽きない。
早くこの悲しい気持ちが怒りに変わればいいのに。そうだ。そうだよ。
結局、私も律先輩もムギ先輩も澪先輩も、アクションを起こすのが遅すぎたのだ。
だからトンちゃんは殺された。あの真性のイカれ女に。
唯先輩。あなたは今どんな顔をしているのですか?
電話が鳴った。外を見ると、もう黄昏時になっていた。
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