過去ログ - 騎士「全てを見届ける」
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/01/31(月) 22:12:56.87 ID:aoryfah40
噂というものはすぐに広まるものである。
翌日にメイドが辞表を持ってきたのを皮切りに、城下町の人々は騎士を化け物呼ばわりし始めた。
次いで城の者たちも。騎士団の部下達もまた、彼と距離を置き始めていた。
誰も彼も、騎士を見る目が変わっていた。

救国の英雄から、おぞましい化け物を見る目へと。

どこにいるにしても、人の目が追ってくる。
騎士は騎士団長の座を退き、自宅に引きこもっていた。

騎士「……なあ、勇者、僧侶……、俺は化け物になっちまった」

騎士「お前達の所に行きたいと願っても、最早叶うことなんて無いんだぜ……」

騎士「笑っちゃうよな……」

騎士「ああ、そうそう。最近やっと、お前らが英雄として認められ始めてるぜ……」

騎士「……魔王を斃し、闇の眷属である俺に謀られ殺された悲運の英雄サマだってよ」

騎士「あはははは! 笑っちゃうよなあ……。誰がお前らを殺すもんかよ……。あれだけ俺はお前達を助けたかったのに」

騎士「それを、俺が殺しただと!? ふざけるな! 俺は、俺は魔王を……斃して……、どうして!」

騎士「どうして俺がこんな目にあわなくちゃならないんだ!」

騎士「俺はただ……。平和に暮らしたかっただけ……なのに……」

騎士「平和な世界が……欲しかったんだ……」

騎士「なのに……どうして……」

勇娘「……おとーさん……?」

騎士「っ、勇娘……、起こしちゃったか?」

勇娘「かお、こわいー」

騎士「……はは、すまん」

勇娘は三歳になり、言葉も覚え始めていた。
母親の僧侶に似て可愛らしい子供だ。
彼女の登場に、荒れていた騎士の心は少し静まった。

騎士「そうだ……俺はお前を育てないといけないんだ。勇者と僧侶の愛娘を……」

勇娘「?」

騎士「……良い子だ。さあ、眠りな」

勇娘「いっしょがいー」

騎士「…………本当に、良い子だよ」

愛おしげに勇娘の頭を撫で、騎士は彼女を抱っこした。
彼女と触れあっている間だけは、まだ幸せな気持ちを忘れずにいられるような気がする。


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