62:素顔同盟を知っているか[sage saga]
2011/03/30(水) 23:57:08.95 ID:F67Xm6V40
その時、僕は彼女を咎めたり警察に通報しようという気にはならなかった。
理由はわかっている。例えその行為が違法だとしても、僕はようやく自分と同類に会えたような気がしていたのだ。彼女は僕と同じ側にいる人間に違いなかった。
しかし咎めることが出来なかったのと同じように、僕は彼女に声をかけることが出来なかった。
初めて自分と同じ側の人間を見つけることが出来たのに、僕は誰かに見られることを恐れるあまり、自分でその機会を逃してしまった。結局僕は、自分の身が大事だったのだ。
その夜、夢の中に彼女が出てきた。笑顔の仮面を外すと、悲しい素顔が姿を現した。そうして遠くの方を見つめるような眼差しで僕を見つめる。僕に失望し、軽蔑しているようだった。
翌日、僕は学校で先生に怒られた。先生が僕のことを反社会的だと言うと、誰も僕に近付かなくなった。
その後の僕は腫れ物のように扱われ、次第にみんなから疎まれるようになった。
独りになる時間が増え、彼女を見かけた東の公園に行くことが日課になっていた。
しかしあの日以来、彼女の姿を目にすることはなかった。ひょっとすると彼女は仮面を外していたのが見つかって、どこかの施設に隔離されているのもしれない。
だとすれば僕には、もう二度と同類とめぐり合う機会はないだろう。いまさら遅いとわかっていても、どうしようもなく後悔してしまうのだった。
418Res/258.53 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。