過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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89:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/03/27(日) 21:28:57.00 ID:G14G1ccfo
カエル顔に借りた端末から『書庫』を蹂躙している美琴が、背後の気配に警告する。
「それ以上近寄ったら『超電磁砲』を喰らわせるわよ」
「そいつはお前のとっておきか?」
「違うわ」
「そうか」
「アンタにはまだ生きていて欲しいからね」
「そりゃどうも」
いくらか温度が下がったようだ。確固たる信念が羞恥心に勝ったのだろう。
「ああ、『実験』のスケジュールはまだ更新されてないわよ」
「どういうことだ?」
「新しい予定がまだ組まれてないってこと。だから少なくとも今日は、予定の時間に誰もいな
ければ、その回の『実験』は中止になったってことね」
「そいつは痛し痒しだな」
「どうしてよ?」
「『実験』が減れば、助けられる人数も減るだろ?」
「アンタは『もしも』のことを考えないの?」
「考えねえな。そいつは――」
「『弱い考え』、ね。」
「そういうことだ」
「たまにアンタが羨ましくなるわよ。なりたいとは思わないけど」
「バカになるとこから始めなきゃならねえからな」
「それは堪え難いわね」
「考えるのをやめてみるのも、楽しいもんだぜ?」
「今度試してみるわ。暇な時にね」
気のない応えを返し、『書庫』の探索に戻ろうとした美琴に、カズマが肝心なことを伝える。
「っと、そうだ。カプセルに入ってる方の『妹』な、昼には起こせるってよ」
「わかった、ありがとう」
「こっちはそろそろ時間だ。それじゃ、またあとでな」
「頼むわね。何か判ったら連絡するから」
「あいよ」
軽快な足音が遠ざかるのを待って、美琴は端末の電源を落とす。昨日の後始末があるのだ。
× × ×
「ふんっ、がっ!」
「あまり無理をするんじゃないよ?」
「……いい、鍛練に、なる、わ」
カズマの『いやげ物』に挑む美琴を、カエル顔の医者が見守る。
床は転がせばどうにかなるとして、問題は階段だ。屋上から階下までの道のりはピラミッド
のように遠大で、鞭で打たれるエジプトの労働者の気分を追体験するのには最適である。
「これ、を担い、で、宇宙、から、帰って、来る、なん、てッ!」
「マトモでも人間でもないと、僕は思うね?」
「本、当に、ねッ」
ドゴァ、と着地した『地上攻撃用大口径レーザーの射出口』が床面に亀裂を入れるが、二人
は気にしない。
「……そんな君もまた、マトモじゃないとは思うけどね?」
荒い息を吐き、額の汗を拭う美琴と、隣の巨大なブツを見比べて、カエル顔が正直な感想を
漏らす。
「……この程度じゃ足りないのよ。一〇〇一九人を背負うには、ね」
射出口をエレベータに向けて転がしながら、カエル顔が訊く。
「君もあの男のように、人間を超越したいのかい?」
「それはないわ。『姉』が人間じゃなくなったら『妹たち』が困るじゃない」
「他のやり方で強くなると?」
「それも特急でね」
「当てがあるようだけど、訊いてもいいかい?」
射出口ごとエレベータに乗り込み、下る。
「『幻想御手』と『ミサカネットワーク』の融合。私と妹たちの脳波は同一なのよね?」
「そうか。確かに君たちは同じDNAから構成されているから、君が『ミサカネットワーク』
に接続するのは理論的には可能だ。それに『幻想御手』のような弊害を起こすこともなく――」
「『幻想御手』と同等の効果を無制限に利用できる。そうよね?」
「そしてここには接続に必要な調整を行える『学習装置』と、その監修者も揃っている。いや、
恐れ入ったよ。君はそこまでを読んで『実験』の施設に押し入ったのかい?」
「まさか。私は手札の中で役を作っただけよ」
ドアが開き、二人は射出口を地下倉庫へ転がして行く。こんなところに軍事衛星の『残骸』
が隠されているとは、お釈迦様でも気がつくまい。
× × ×
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