過去ログ - 上条「なんだこのカード」 3rd season
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757:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/08/09(火) 03:02:13.02 ID:7arGJqoCP

「とは言っても、私は今あのビルの中に居る先代の私とは、やはり違うのだよ」

指先にホログラムのようなディスプレイを生じさせ、そこに流れる数字や二重螺旋構造やヒストンのマップを眺めながら、彼は呟いた

「へぇ。何が違うと言うんだ」

と、これまたどこで拾ったのか表紙のすすけた雑誌を眺めつつ、彼女は答える

がっしりとした骨格のみが残ったビルの屋上に、彼は立ち、彼女は座っている

照らすのは星明りと月明かりのみだが、彼女はその雑誌が読めるらしい

「やり直したという行為の下であるから私と言う存在に変化が生じるのは当然でもあるんだが、最大の違いは、そうだな。なにより」

「なにより? アタシに教えて下さいよー」

唐突に女のような姿をした方の口調が変わった。しかし、視線は雑誌のままだ

「……その話し方は何だ?」

疑問を口にすると、ようやく女は男の方を見る

「いや、この紙に載っている小説の登場人物の口調を真似てみたんだが。なんというか、このアタシという一人称がしっくりくると言うか、気に入ってね」

「ふむ、そうか」

「君が気に入らないなら、止めるが?」

「別に構わない。ただ少々、その口調から知り合いを思い起こされるだけだ」

「知り合いと言うのは、今の姿になる前のものなのだろう?」

「ああ、その通り。なんの変哲も無いただの無能力者の少女だったのだが、私が黒い世界へ巻き込んでしまった」

声に特別な感情があるようには聞えなかったが、しかしわざわざ口にした時点で何らかの感情を負っているのは確かなのだろう

「それは、その子にとっては災難だったろうに。だが、巻き込まれた方には巻き込まれただけの理由が有ったのではないだろうか? なんの可能性も無しに、物事は起きたりしないだろう?」

一種、フォローするような言い方だった

「確かに、彼女には巻き込まれるだけの確かな理由が有ったな」

「だったら、あなたがそれを気に病む必要は無いですよ。何も分からないまま影で何かが進んでいて、気が付いた時にはもう手の施しようが無いってことの方が、アタシからしたらよっぽど怖いと思うなぁ」



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