過去ログ - 紬「タックマン?」
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45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/03/17(木) 09:42:33.72 ID:LjwDMhJOo
約十年前 日本 桜が丘 琴吹ビル最上階


紬「すごーい!」

紬父「どうだ、父さん、ここで仕事してるんだぞ。すごいだろー」

紬「この街で一番おおきいビルなんでしょ? ひとが虫みたいにちっちゃくみえるね!」

紬父「ああ。でもな、紬。ここから見える人、一人ひとり、毎日頑張って生きてる。たとえ小さく見えても、みんな私や紬と同じ、大切なこの街の仲間なんだ」

紬「仲間……?」

紬父「ああ、大切な仲間だ。紬、まだ、君にはこの意味がわからないかもしれない。でも、覚えておいて欲しい」

紬「おとうさま?」

紬父「君にも、いつか仲間ができるだろう。大切な仲間が。めったに出会えない、愉快な人たちと出会うことも、できるかもしれない」

紬「愉快な人。それって、わたしをいじめない?」

紬父「ああ、君はその仲間達に、たくさんの幸せを貰ったり、その中でたくさんの経験をつんだりするだろう。仲間のいる日々は、何より楽しいものになるだろう」

父は、悲しそうな顔をした。その意味は、その時の紬にはわからなかった。

紬父「だけどね、紬。幸せは永遠じゃない。大人にならなければならないときもある。いつまでも輝いてなんていられない。人は強いけど、世の中は今、とっても生きにくいんだ」

当時の日本は大不況に落ちいっていた。国の財政状況が悪化すると同時に治安も悪くなり、犯罪率は増加の一途をたどっていた。
人は一枚の紙切れに人生を左右され、職を失い――命までもを、失う時代だった。人が人ではなくなる時代。
しかし紬の父は自らの会社を圧迫してでも慈善事業や寄付に取り組み、少しでも多くの人を救おうとした。
桜が丘の発展と治安維持にも貢献し、桜が丘は豊かで安全な街として知られていた。
犯罪と戦う彼の意思が桜が丘の人々にも伝わり、日本中で人々の心はすさんでいたが、桜が丘の人々は希望に満ちた表情をしていた。

紬父「君は仲間たちをお別れをしてしまうことになるかもしれない。大切な人と離れ離れになってしまうかもしれない」

紬「おとうさまとも?」

紬父「ああ、私ともいつまでも一緒にはいられない。きっと私が先に死ぬだろうし――娘に先に死なれるのは困るしね。だけど、忘れないで欲しい」

父は腰を落とし、紬と目線を合わせる。まっすぐな目だった。濁りの無い、一人の人間として誠実な心をささげだす覚悟を紬に感じさせた。

紬父「たとえ距離が離れても、心は――心で一緒にいることはできる。仲間を信じ、思い続ければ、心は一つだ。ずっと離れない」

紬「心……?」

紬父「そう、心だ。仲間を大切に思う気持ちを、ずっと持ち続けて欲しい。それが私が紬に望む、唯一のことだ」

紬「おとうさま……。うん。きっと、大切にするよ。いつか出会う、大切な仲間たちを」

紬父「偉いぞ、紬」

父は紬の頭を少しだけ乱暴に撫でた。大きい手。父親のぬくもりが宿っていた。


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