過去ログ - フィアンマ「これがあの男が命を懸けて救った世界、か」
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335:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/06/15(金) 23:29:06.85 ID:CypdjJ6do

 或いは、その迷いの無さは当然なのかもしれない。
 彼は思考に確固たる地盤を持っている。だから今更迷うことが無い。

「ところで、一つじゃなかったのか」

「些細なことだろう」

「良いけどよ。それで、どうなんだ。まだ俺達に味方するつもりか」

 フィアンマは黙る。
 彼は迷う。今更になって迷う。
 確かな足場を持たない彼は、或いは持っているのか否かさえも分からない彼は。

「……どちらの味方も出来ない」

 ここには理不尽な暴力があるわけでは無い。
 どちらも正当性はあり、どちらにも欠陥はある。
 それでも彼らは、別々の道を行く彼らは同じように躊躇わすに進むだろう。

「俺様では、どうあっても不足だ」

 彼らは、それだけ大切なものを持っている。捨てられない思いがある。

「そうかい。じゃあ、世話になったな」

 それだけだった。
 青年は一度もこちらを見ることは無く、彼の前から姿を消す。

「……」

 その背中を見送ったフィアンマは、ようやく雨が降っていることに気付く。
 先ほど聞いた通り大した雨では無い。さらさらとした、霧のような薄い雨だ。
 流れてやがては消えてしまうだけで、滞ることはあっても決して積もることなど無い。
 そんな当たり前で不快なだけの雨だった。




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