203:ティーカップに、欲望を11 ◆hwowIh89qo[自分の作品がもし誰かの手でイラスト化されたら、とよく妄想しますが]
2012/01/28(土) 21:28:55.88 ID:1bve/6vv0
「私、夢で見たんです」
「……冬森さん?」
意を決した、というよりは、この状況に酔っているかのような様子だ。
目が蕩けているように見えるし、正常な思考ができているかわからない。
「それで、いいと思ったんです。それが秋川君なら、私、幸せだって」
「それ、って」
聞かなくても、わかっているはずだ。多分、彼女も今朝、僕と同じ夢を見たのだ。
きっと――あの、熱病のような、頭がのぼせそうな夢を。
「……今は、家に、誰もいないんですよ」
「そうだね。君と、僕しかいない」
いつしか行ったやり取りの、まるで正反対だ。
あの時は、『家にみんないた』のだ。そして、今は、『家に誰もいない』
……彼女が言わんとしていることは、わかる。でも、いいのか?
「冬森さん。君は――」
僕が言いかけたことを、彼女は強引にキスで塞いだ。
少し力が入っているのか、どこか熱っぽく、濃厚なものだ。
舌を入れるような、所謂“深い”キスではないものの――。
それでも、何もかもが融けてしまうような、あるいは、どうでもよくなってしまうような、そんな気分にさせるのには十分だった。
おかしい。絶対に、おかしい。
「……おかしいことなんて、何もないですよ」
長いキスをようやく終えると、彼女は普段どおりの、暖かな笑みを浮かべてそう言った。
僕は少し怯えてしまっていたかもしれない。……状況の急な変化が得意な性質ではないのだ。
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