過去ログ - 男「また、あした」
1- 20
29:>>1[saga]
2011/03/29(火) 20:08:41.02 ID:NprJWFFv0
「とりあえず、帰ろうか」
「あ、その。一緒に、というより、送ってくれるとか……」
「春野さんの言うことには従わなきゃね。彼女には恩もある」
「その、嫌ならいいんですよ?」
「そういうわけにもいかないよ。モラル的にも考えて」
「なら、これから一緒にマーブルに行きませんか?」
「いいね、僕も少しお腹が減っていたところなんだ」
「今日はマフィンを買うつもりなんですよ」
「マーブルといえばマフィンだよね。どの店よりもああいうのはマーブルが美味しい。ただ、僕は何か……そうだなぁ。クリーム。それもチョコのがいいな。ケーキにしよう」
「ケーキ。いいですよね、でも、結構高かったと思うんですけど」
「今のところは財布に余裕があるからね。少し贅沢したいんだ」

僕がそういうと、冬森さんはしばらく思考を巡らせた後、我慢できないとでもいうように口を開いた。というより、ずるい、とはっきりいっているような眼で僕を見ている。

「うう。じゃあ、私もケーキにします」
「え? 高いって言ってなかった?」
「あそこのチョコケーキ、絶品なんですよ。だから買おうと思うんですけど、目の前で買われると私まで欲しくなっちゃいます。もう頭の中、マーブルのチョコケーキでいっぱいなんですよ」
「そんなこと言われると責任感じるなあ。まぁ、いいか。じゃあ行こう」

 僕が教室から出ると、冬森さんもすぐ隣についてきた。
傍目から見たらどう考えてもそういう風に見えるだろうので、僕は若干の気恥ずかしさを負いながらもマーブルに向かったのである。
無論、そこまでの道中、そしてそこから冬森さんの家までこの状態が続くことになる。なんだか僕の精神力を試すような場面だ。
でも、春野さんの命なのだから投げ出すわけにもいかない。彼女は間違いなく怖いひとだが、僕の恩人であることも確かなのだから。
こういう形でもその恩に応えなければならないのである。彼女は僕に恩を着せたつもりなかったとしても、だ。
しばらくして、洋菓子店「マーブル」にたどり着く。店内に入ると、お菓子屋さん独特の甘い匂いが鼻についた。
やはり、いつきてもいいものだ。お菓子屋さんというのは。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
223Res/233.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice