過去ログ - レイラ「さようなら、真賀田博士」
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[saga]
2011/04/09(土) 03:29:21.08 ID:bjkclqc70

「わたしたちが最初の……えーと、お客? みたいね」

ふらふらしながら美衣が言う。

船体は特に飾り立てられていなかった。外から見る限りではパーティの会場とは予想もできない。しかし、ひとたびキャビンに入るとその装いは一変する。

円筒形をしたテーブルが広いホールを囲むように、一見無秩序に並べられ、その上には豪勢な料理がゆとりを持ってきらびやかに盛り付けられている。

毛足の長い絨毯の敷き詰められたフロアの中央は、ごく自然に、テーブルが違和感を与えることなくその密度を減らし、ダンス・ホールの様相を呈している。

さりげなく壁に掛けられた絵画の数々や、場を乱さない完璧な調和で並べられた生花。

ステージに置かれたグランドピアノとオーケストラのセットは、これからの演出を想像するに余りあった。

そしてこれが船上パーティだということを鑑みると、最も驚くべきは高い天井において光を放つそれにあった。

「シャンデリア……ほんものだー!」

かつて教授が言っていたことを思い出す。船の上では、落下する危険のある大きな照明器具は使わない。

「ねえ、教授。あれ落ちてきたりしないの?」

「はん。亜衣、見ろよ。あれ、吊り下げられてないだろ」

「何よ。どーゆーこと」

「つまりあれは、据え付けのシャンデリアなんだ。天井に埋め込まれてるから、落ちてくるはずがない」

つまり、この会場のテーマを統一するために大規模な改装を行ったということ。

「ていうか、あれ? 教授は?」

「あっち」

バーのようになっているコーナーで、カウンターのお姉さんに何か聞いている背広の男。

信じがたいことに、様になっていた。

しかしその雰囲気はすぐに霧消し、彼はこちらに戻ってくる途中、背広の内ポケットから何かを取り出す。

お気に入りの、持参の、箸。

「ちょっと教授! 今回の目的はパーティじゃないんじゃなかったの!?」

「博士はまだ、姿を見せないそうだよ。そしてここには一級の料理の数々。亜衣ちゃんは僕に、彼らの呼び声を聞き流せというのかい? それこそ――料理に対して失礼じゃないか」

彼が人間の言葉を解したのは、これが最後だった。

箸を構え、きちんと両手を合わせて、あいさつ――「いただきます」

そして男は、野獣になった。



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