18:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:41:53.98 ID:nYXsbXrS0
あまりの理不尽さに僕は憤った。冬月副司令、断固許すまじ。
僕はアスカの手配してくれた隠れ家に速やかに逃げ込み、冬月副司令に見つからないように息をひそめ、
生まれたての小鹿のようにぷるぷると怒りに震えていた。
○
この20日間あまり、単調にドアから入って窓から出るという行為ばかりを繰り返してきた。
考えてみればこれはあまりに頭の固いやり方じゃないか?
本当に脱出したいのであれば、壁を破ればいいじゃないか。
ひょっとすると、それだけで全てが解決するかもしれない。
隣は葛城二佐の部屋があるはずだけれど、もし僕が壁の穴から乱入してきても、
彼女なら笑ってすませてくれる気がする。たぶん。
そう考えると急に元気が湧いてきた。
僕は腕立て伏せ及び似非ヒンズースクワットをしてから、イスを持ち上げ壁に向かって放り投げた。
壁に壁が凹み、亀裂が入った。
亀裂が入ったところを思い切り蹴飛ばすと、直径15センチほどの穴が開いた。
穴の向こうには蛍光灯の明かりが見えた。
「やったー!」
僕は感涙にむせび泣き、穴を広げてくぐり抜けた。そうして僕が出たところは、やっぱり同じ部屋だった。
その後、僕は思いつくままに壁を壊し続け、ドアを開け、窓を開け、ジョニーを慰め、
カステラを食べ過ぎてゲロを吐き、また思い出したように壁を壊し続けたりした。
広大な自室を放浪し続けた。
○
冬月副司令が覇権を握った後の話をするよ。
「ユイさん誘拐計画」から逃走した後、僕は隠れ家に籠ってぷるぷる震えていた。
はっきりと反抗の意思を表明した以上、冬月司令は<特殊監査部>を動かして、
僕をひねり潰してしまうだろう。
父さんの運命は、僕の運命でもある。
アスカによると冬月司令は鵜の目鷹の目で僕の居所を探しているらしかった。
「冬月司令にも困ったもんよ。ちょっと暴走気味なのよねぇ」
とアスカは言った。
「<技術開発部>の方でもナントカしなくっちゃと話しあっていたところなの」
僕は隠れ家から一歩も外に出なかった。
隠れ家と言うのは、かつて僕がNERVへ出頭させようとしていた加持リョウジの自室だった。
加持師匠の部屋に隠れるというアスカの案を初めは真に受けなかった。
「ヘタに動くよりもここに隠れていたほうが良いのよ。灯台もと暗しと言うでしょう」
アスカに説得されて、僕は加持師匠のもとへ居候することにした。
アスカはしばらく姿を見せなかった。
僕の学生生活が終わろうとしている今、こんな所でうずくまっていていいんだろうか。
僕が陰気な顔をして本を読んでいると、加持師匠は煙草吸い、のんきな口調で慰めてくれた。
「まあ大船に乗ったつもりでいなさい。アスカならきっとうまく収めるだろう」
「あいつ裏切るんじゃないですかね」
僕は疑い深げに尋ねた。
「うん、ま、そういう可能性もあるな」
加持師匠は楽しそうに言った。
「あの子の行動は予測がつかないからな」
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