過去ログ - アスカ「私なりの愛ってやつよ」
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21:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:44:17.43 ID:nYXsbXrS0
 アスカのような恐ろしい人間とは早く袂を分かとうと思っていたけれど、それもうまくいかなかった。
 自室にこもる僕を訪ねてくるのは、アスカだけだったからさ。

 ○

 僕は痛々しい行軍を続けた。

 その日泊まった部屋には見覚えの無い写真があった。
 加持師匠とアスカと僕と葛城二佐が、鍋をつついている写真だった。
 四人で鍋をつついた記憶は無い。

 その瞬間僕はこの部屋の仕組みを把握した。

 かつて買いそびれた本が並ぶ本棚、僕が入っていないはずの英会話教室。

 そうなんだ、ここは僕のパラレルワールドなんだ。
 これまでの何十日の間、僕は様々な選択の中であり得た別の並行世界を横切って来たんだ。

 ほんの些細な決断で僕の運命は変わる。

 日々僕は無数の決断を繰り返すのだから、無数の異なる運命が生まれる。
 無数の僕が生まれる。
 無数の部屋が生まれる。
 したがってこの世界には、果ては無かったんだ。

 これは、70日目の出来事だった。

 ○

 果てしなく広がる自室との戦い。その中で、色々と分かった事がある。

 各々の部屋には各々の人生を歩んでいる自分がいる。
 しかしその誰もが、不毛なスクールライフを謳歌しているように思えた。

 そこで、各部屋に痕跡を残す写真や手紙などを手掛かりに、僕を取り巻く人物たちを
調べてみることにした。

 赤木博士という女性は技術部の女部長だった。
 明晰な頭脳と毒舌っぷりに、意外とファンの多い女性だ。

 加持師匠という男はがけっぷちの不良職員だけれども、その態度はあくまで傲然としていた。

 葛城二佐もNERVの職員であり、二人と同期であることが分かった。
 頻繁に葛城二佐は加持師匠の部屋を訪ねており、数人の弟子まで取っていたようだ。

 かくいう僕の一人も弟子になっているようだった。

 碇司令はユイさんという恋人がありながら、赤木博士を気にかけているようで、葛城二佐は
加持師匠と付き合っているようでもあり、そうでもなさそうでもあり、なおかつ今度は加持師匠が
世界一周の旅に出るという。

 加持師匠が葛城二佐に気があるのなら、葛城二佐を放置しているのは何とももどかしい。
 道端に落ちているダイヤモンドに気付かないふりをしているようなものじゃないか。

 しかし、これだけの面々に囲まれた僕のスクールライフははち切れんばかりに
充実していたはずだよ。

 それに気付かなかった僕は馬鹿だ。
 大馬鹿だったんだ。

 ○

 アスカ。

 ほとんど全ての僕の部屋にカステラを運ぶ女。
 たくさんの組織に属し、その全容は把握しきれない。

 情報通で、人の恋路を邪魔し、日常的に修羅場の炎があちこちに燃え盛るようにけしかけ、
加持師匠の弟子として碇司令の暴露映画を製作しながら、碇司令に取り入り、二重スパイとして
加持師匠の愛車をピンク色に塗り替えた。

 やがて冬月副司令の手先となりながら、碇司令をNERVから追い出し、今度は冬月副司令をはめて
自分がNERVのトップへ躍り出た。

 八面六臂の大活躍で己のスクールライフを謳歌しながら、全ての僕にちょっかいを出し続ける。

 再びこの女の子に出会えるならば。
 今度こそ充実したスクールライフを送ってみせる。


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