7:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:30:07.20 ID:nYXsbXrS0
もとの部屋へ戻った僕は、頭を抱えて唸った。
およそ80日間にもおよぶ僕の「冒険旅行」は、こうして始まったんだ。
○
もとの部屋へ戻った僕は、自分が今なすべきことについて思いを巡らせた。
慌てたところで埒があかない。
冷静になって考えてみるに、これまで熱心に出ようとしなかったものを、今さら慌てて出ようなんて
いかにも人間の底が浅いじゃないか?
今まさに危機が迫っているってわけじゃない。
腰を据えてどっしり構えているうちに、事態は自ずと好転するだろう。
僕はそう決めた。
そうして悠々とわいせつ図書をひも解き、適当なものを取り上げて、官能の世界へ思いを馳せた。
ひたすら馳せて、虚しくなってきた。
やがて時計の針が一回りした。
自室に置いてある小型冷蔵庫の中にはろくなものがない。
手で剥いて食べるタイプのソーセージが一本と、ミネラルウォーターが数本あるだけだった。
ソーセージに手をつけると、後には何にも残っていない。
携帯電話で助けを呼ぼうとしたけれど、無情にも圏外だった。
寝る前にもう一度確認したけれど、やっぱり窓の外もドアの外も
僕の部屋が広がるばかりだった。
明かりを消してベッドに横になり、天井を睨んだ。
どうしてこんな世界に迷い込んだのか?僕は一つの仮説を立てた。
「第三新東京市の占い師の呪い」仮説だ。
○
数日前、気晴らしに駅前アーケードへ出かけた。
古書店や洋服屋を覗いたりした後、僕は繁華街をぶらぶら歩いた。
そこであの占い師に出会ったんだよ。
飲み屋や風俗店がならぶ中に、身を細めるようにして暗い民家が建っていた。
その軒下に、白い布をかけた木の台を前にして座る少年がいた。
「……?男の子?」
台の上に掛けられた小さな行燈からの明かりが、その少年の顔を浮かび上がらせる。
彼は銀色がかった白い髪の毛をしており、顔色も負けないくらい白い。
目は赤かった。
人目を引く容貌をしているものだから、僕が目を離せないでいると、やがて相手もこちらに気づいたらしい。
夕闇の奥から目を輝かせて僕を見た。
しかし、彼が発散する妖気にはなにやら説得力があり、僕は論理的に考えた。
これだけの妖気を無料で垂れ流している人物の占いが当たらないわけはない、と。
僕は少年の妖気に吸い寄せられるように足を踏み出した。
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