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2011/05/04(水) 15:21:48.26 ID:8SUUmgK10
【垣根帝督】
能力を再び発動しようとしたり、記憶を思い出そうとしているうちにあたりは薄暗くなっていた。
公園に人はおらず、冷たい風がただ吹いている。
そろそろ戻るとするか。
俺はベンチから立ち上がる。
すると、俺の元へ白衣を着た老人がゆっくりと近づいてきた。
白衣を着ていることから……医者なのか?
「垣根……帝督だな?」
「まあ……そうだが」
一瞬誰だっけと思ったが、俺は垣根帝督という名前だったなと再び思い出す。
「是非、私達の研究所に来て欲しいのだが」
「研究所?」
「そう。君の持つ「未元物質」について新たに調べたくてね」
その老人の言葉に、少しだけぞっとした。
研究所。調べる。能力を。
記憶にはないが、それはとても酷いものらしい。
そしてレベル5となればそれは一般の能力者よりも……。
「悪い話ではないだろう。奨学金もたっぷり出そう」
老人は気持ち悪いくらいの笑顔で俺を見ていた。
研究材料……モルモットを見るような目で。
「……ッ!」
もしこの話にのったら俺はどうなるんだ?
今までの俺はどうしていたんだ?
考えただけで気分が悪くなってきた。
声が出ない。
身体中にサイレンが鳴り響いている。
俺よりも小さいのに、とてつもない恐怖に襲われる。
「こっ……断る……ッ!」
なんとか声をだすことができた。
だが、老人は顔色一つも変えることはない。
「いいや、そんなことを言わずにね? 君は能力者なんだよ。能力者は……ただ従っていればいいんだよ」
「……!」
老人が合図を出すと、草陰から黒ずくめの男たちが現れた。
「せっかく戻ったのだから、このチャンスは無駄にはしたくないんだよ」
再び老人が合図すると、男たちが銃を構えゆっくりとこちらにやってくる。
銃を見て、考える余裕が吹っ飛んだ俺は、その場から走り去っていた。
「おえ」
走り去った後に残された老人は静かに命令する。
黒ずくめの男たちは素早く垣根の後を追った。
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