780:すけこ☆マギカ[sage saga]
2011/07/17(日) 22:40:15.71 ID:utcPm39Ao
恭子は笑う。
「僕を殺さないの?」
杏子は笑い返した。
「オマエ、動けるか?」
二人はしばらく、見つめ合っていた。
横たわった恭子は微動だにしない。その腹に座る杏子も。
「……残念ながら、期待に添えそうにない。杏子さん、これが君の、根源の魔法なんだね。変幻の祈り、幻惑の願い」
「そうだ、アタシは幻を求めた。アタシの愛するモノを皆も愛せなんて、無理を言った。自分の人生にケチつけちまった」
「なぜ今まで封じてきたの」
「そんな事、聞くなよ。デリカシーのない奴だな。せっかく見ないフリでやってこれたのに、オマエはひどいヤツだよ」
「杏子さんの力は本当にすごいよ。触れられた途端、首から下の感覚が、手品のように消えてしまった。
それに、あの鎖の結界は……本当に厄介。僕の魔法が、さやかに届かない」
「ヒトのオンナに手ェ出してんじゃねーよ」
「さやかは誰のものか、さやか自身に聞いてみなよ」
空に響く慟哭は強くなり、地面を揺らす。
二人は動かない。
「目的はなんだ、すけこ。さっきのソックリさんといい、さやかといい、何が狙いだ?」
「ほら杏子さん、僕の脚に。こっちは本当のソウルジェムだよ。壊してみたら?」
「どうせダミーだろ。さっきのヤツみたいに」
「ひとを疑うなんて、いけない事だよ。お父さんに教わらなかったの」
「オヤは関係ないだろ、オヤはよ」
「関係ないって事はないよ」
「説教なんて大キライだ。糞の役にも立たない」
「杏子さん、お父さんは『こういう時』どうしなさいって言ってた?」
恭子の動きを警戒しながら、杏子は肩越しに視線を向ける。
マミの姿がなかった。
代わりのように、奇妙な小山ができていた。それが何なのか、一瞬、杏子には理解できなかった。
イモムシだ。よく見れば、大量のクリーム色のイモムシだ。一匹一匹の大きさは猫ほど。身を縮めてはバネのように高く跳ねるイモムシ。
地面に散らばっていた黒曜石の破片が、白く膨らみ、次々とそれに変わっていく。
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