過去ログ - 少女「奴隷はもうやだよ……」
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863:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage_saga]
2011/09/17(土) 23:13:40.86 ID:PhQ4JxAeo
少女『……』

公爵 そっ

少女 ぎゅーっ


 だから、みんな嫌いだった。

 お父さんと私に『悪い事』を押しつけて、
 石を投げつけてきた人たちが、嫌いだった

 でも、少しずつ変わった。

兄『嫌な事があったら怒っても良いんだ。
 怒らないと相手にもどれだけ嫌なのか伝わらないだろ』

 お兄ちゃんが、手を引いてくれたから。

兄『お前は笑わないな。……笑えば可愛いのに』

 次第に友達ができて、遊ぶようになったから。

兄『大丈夫か、少女?』

 ……違う、その時にずっと、思っていた。

 お兄ちゃんができて、
 お兄ちゃんが貴族を継ぐ事になった。

 貴族でなくても、よくなったって思ったから。

 押しつけて、忘れようとして……忘れて

 そうだ、私も変わらない。
 貴族に罪を任せた人達とかわらない。
 神様に罪の許しを任せた教会の人達とかわらない。

 お兄ちゃんが島を出て行く時。
 それを嫌がったのは、分かれがたかったからだけ?

 きっと、記憶の中に押し込めてた、
 貴族になることの恐怖があったから。

 決めたはずの覚悟は必要なくなったから捨てたのに、
 積み上げた石を崩されて、
 また積み上げないといけなくなったら、
 きっとこんな気持ちなのだろう。

 あの時と同じ恐怖――
 いや、一度人を殺した。
 だからもっと具体的な恐怖が、
 私の背中から手を伸ばして、心臓を締め上げている。

 人を殺した瞬間の、あの言いようのない罪悪感。

『死にたくない』
『死は恐ろしい』
『イタイ』
『クルシイ』
『カナシイ』
『サミシイ』
『いやだ、いやだ、まだイヤだ』
『恨んでやる。呪ってやる』
『お前が殺したと、お前が悪だと、憎み続けてやる』

 それでも死は、その目を閉ざさせる。

 目の前で振り撒かれる死の恐怖と、怨嗟の呪い。

 貴族になるならそれを全部、
 背負うと、言い切らないといけない。

「もしも私が家出同然に旅に出なかったら、
 人を殺す事の恐怖を、知らないで済んだのかな……」

 そんなはずはないと、誰よりも私がよく知っている。


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