962:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage_saga]
2011/09/25(日) 00:02:35.33 ID:odomHPFPo
男「さて、形だけでも整えた調印式場を片付けるか」
公女「ねえ、ちょっ、あーもーっ!」
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朝 貸し馬車内
眼帯「……なんだか、あの公女さん、
今日は別人みたいでしたね」
青年「そういう事もあるだろうな」
眼帯「何か知ってるんですか」
青年「あの人が――俺の尊敬する先輩にして剣の師が、
彼女の隣に控えていた」
眼帯「あの無愛想な男ですか」
青年「愛想は無いが、良い人だ。
人の窮状を見過ごすことなく、
誰に対してもこびて態度を変えることなく、
奴隷に対しても彼らを尊厳ある人間として扱っていた」
眼帯「でも、そんな事は誰にでもできると思いますよ」
青年「確かにそうだな。
簡単で、少し考えれば誰にでも出来る事だろう。
でも、誰もしなかった事だ」
眼帯「……」
青年「正しいとわかっていても、
疲れそうな行為は敬遠したくなるものだ。
まして、やらまくても良いと許容する空気があるなら、
人はソレが出来ないものだろう。
だが、そこで彼は他の人と違う行動を取った。
その姿を見たから、
俺も本当の『騎士』を目指したくなった」
眼帯「なるほど。そんな人間がついて、
後ろから支持をしていたから、強気になんですね」
青年「……彼女の変化は、
内面からのモノだろうと思うがな。
少なくとも、何かの悩みは吹っ切れたのだろう。
交渉という剣を持たない場だったが、
船で訓練した時には見えなかった瞳の輝きに、
危うく自分を忘れる所だった」
眼帯「……もう冬になろうという頃に、春ですか?」
青年「なにを言っている。
騎士団は神に忠誠を誓った剣だ。
そんな雑念の持ち合わせはない」
眼帯「失礼しました。
……して、どうでしたか。教会の要求は」
青年「これなら教会も満足するだろう。
最初の条件より割譲する領地が少し減ったが、
理由を聞けば必要な措置だと納得せざるをえん」
眼帯「では、ほぼ要求そのままで、
その書類はリオーマに届けられる、と」
青年「そうだな」
眼帯「良ければ見せていただけますか?」
青年「む、よかろう」すっ
眼帯「確かに。しかし……残念ですよ」
青年「何がだ」
眼帯「いえいえ、こちらの事情です。
だから――とりあえず、殺されてください」
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