49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/26(木) 20:56:35.20 ID:Uf/hU0w2o
  
 考えれば当然のこと。 
 たとえ知人であろうとなかろうと、場所がどこであろうと、人の濡れ場に遭遇したときは普通どう言った行動を取るだろうか。 
 もちろん大半は知らなかったふりをしてその場を立ち去るはずだ。 
  
 その後は何事もなかった風に装う。 
 なぜなら自分には何の関係もないし、目や耳に入れてしまったことを申し訳なく思うこともあるから。 
 そう感じるのが一般的である。 
  
  
 なら、自分はどうだ。 
 突然の出来事に驚くのも無理はない。それが知人、ましてや下手な縁ではない人達。 
 片や恋い焦がれた想い人。片やその想い人を自らの意思と約束で託した男。 
  
  
 だったら、それこそ。 
 本来ならば、即座にその場を離れるべきではなかったのか。 
  
 それをせずに、自分は何をした? 
  
  
 そして、一般論でも語れる程度の問題をあっという間に飲み込んだ、薄っぺらい倫理観。 
 確かに自分は、常識を無意味な文字列だと切り捨てた。 
  
  
 疑問から導き出される回答、それが示す現実に、ぐらりと視界が揺れる。 
 全身から血の気が引いていく音がした。指先が冷えて痛い。 
 震える手を固く握っても、身体そのものが大きく震えていて一向に収まらない。 
  
  
 何のことはない。 
 海原は自分の意思でその場に残り、知人の痴態に酷く興奮し、自らを慰めたのだ。 
 後付けのような正論も、せいぜい言い訳にしかならなかった。 
  
  
 それに気付いた途端、がつんと何かで殴られたかと思うほどの衝撃が頭にきた。 
  
 違う、違う。 
  
 何に対してかもわからず、吐息だけで何度も呟く。 
  
  
 認めたくはない。そんなはずはない。 
 同音異義の否定系が、弱々しく自己弁護を続ける。 
 それを嘲笑うかのように、むき出しにされたままのものは未だ硬さを失っていないのだった。 
  
  
 そんな中、海原のことなどかけらほども意識にない二人の行為は佳境を迎える。 
  
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