7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:12:43.86 ID:wq3gp6Kw0
  
  
  
  
  
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:13:15.93 ID:wq3gp6Kw0
 それからあっけなく、和ちゃんがこの街からいなくなっちゃう日が来た。 
  
 和ちゃんがお願いしたから、誰も見送りにはいかないという。 
 しめた、と思った。これはきっと、私にとっての最後のチャンスなんじゃないか、と。 
  
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:13:59.89 ID:wq3gp6Kw0
 作業は、和ちゃんのいなくなっちゃう日の朝までかかった。 
 らしくもないことをしてしまったから、頭が猛烈につかれて、ぼんやりした。 
  
 だいぶ片付けた、それでもみんなが来る度に、気味が悪い、とバカにされた平沢チキンの横に 
 まだ置いてある時計を見る。 
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:14:53.12 ID:wq3gp6Kw0
 目を覚ますと、いつもの見慣れた天井が見えた。 
  
 隣に和ちゃんはもういない、わかってる。 
 この3ヶ月くらい毎日のように思い知らされた。 
 よく寝た。それでも、まだ9時くらいだと思った。 
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:15:19.73 ID:wq3gp6Kw0
 とんでもないことになった。 
 ガバッ、と起きて、ドタバタと着替える。しまった、着ていく服を用意していなかった。 
 どうしよう。部屋に散らかった服の中からよさそうなのを選んで着た。 
 口からは「あわわわわわ」という声しかでない。 
  
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:16:39.12 ID:wq3gp6Kw0
 どうして私は最後の最後までこうなのか、と走りながら思う。 
 クロワッサンが邪魔だった。欲張るんじゃなかった。 
 小麦粉の変なすっぱみで、口の中がいっぱいになる。 
  
 運動不足で、しだいに痛みだす足と肺に、 
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:18:16.28 ID:wq3gp6Kw0
 それでも、この道をまっすぐいえば、会えると思った。 
 いつも待っててくれたから。私のこと。 
 「ほら、唯」って言ってわらってわらってわらって、 
 私に手をさしのべてくれたから誰よりも、 
 和ちゃん、私はね、和ちゃんがすきなんだよ、ごめんね? 
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:19:00.51 ID:wq3gp6Kw0
  
 だけど、そのエゴがなきゃ、今、私は走れない。 
 たとえば、もう走るのもやめて、CDを和ちゃんに渡すことも諦めて 
 今すぐに来た道を戻ることだってできる。 
 そっちのほうが、運動不足の足と肺にとってはとっても魅力的だった。 
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:19:59.34 ID:wq3gp6Kw0
  
 いつの間にか、泣いていた。 
 泣きながら走る私は、端から見たらさぞかしこっけいだったろうな。 
 はなみずも出てたし。 
 和ちゃんが、行ってしまう。1人でいなくなってしまう。 
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:21:43.76 ID:wq3gp6Kw0
  
 駅についたのは40分くらい。 
 足はもうガクガクに震えていた。 
 財布から小銭を取り出す。ばらまく。 
 私はここぞという時に、お約束を守るとっても良い子だ。 
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