過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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72:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/07/14(木) 21:10:45.95 ID:1DwrXIIAO
〜8〜

世界の命運を左右する少年も一皮向けば健康的な一学生である。
時に若さが出てしまう事もあるが、それもインデックスが居候するようになるまでだ。
特に付き合い始めの7月7日からインデックスがベランダに引っかかっているのを発見するまで――
特に7月10日からの空白の十日間は暇さえあれば、と言う仲良しぶりであった。
一時期インデックスの目を憚って……という時は麦野が爆発したり、上条が暴発したりである。
迸る熱いパトスは常に思い出ではなく理性を裏切るのである。若さ故の過ちと言うべきか。

麦野「(……今度から気をつけようね?)」

上条「(……するな、って言わねえんだな)」

麦野「(……だって)」

雲川「シナモンまだー?」チンチン!

上条「あっ、今持って行きます!」

麦野「(ちくしょう)」

懐かしき蜜月の日々……鳴蜩の寿命並みに短いそれを思うと麦野も遠い眼差しでシナモン片手に去って行く上条の背中を恨みがましく見つめざるを得ない。
もしインデックスとの出会いがなければ――それこそ夏休み中だったに違いないと麦野は頬杖を突きつつ毛先をくるくると捩る。
満更そういう事が嫌いな質でもない、という自身の新たな一面もまた上条を通して知り得た事である。

麦野「(私がお腹かかえて、あいつが頭抱える……ククク、ゾクゾクしてくるじゃない)」

そして今一つの側面は麦野は非常に暗い情念を秘めた性格の持ち主であるという事だ。
その根底、その深奥、その奈落とも言うべき場所に渦巻くものはひどくドロドロしている。
上条の背中に爪を立てるというのも、ある種の示威行為に近い。
仮にフラグを立てた女が何らかの拍子に上条の背中を見たとすれば、その禍々しさに身震いするだろう。
『私の所有物(おとこ)に触れたら殺すぞ』との無言のメッセージとして。

麦野「(でも……もし私達がインデックスと出会わなかったら、一体どんな風になってたのかしらねえ?)」

デザートと来ればお茶にでもしようか、と麦野はヤカンに水を注ぎながらついと物思いに耽る。
もしインデックスに出会わなかったら、自分達にはどんな日常が訪れただろうと。
冷蔵庫からダマスクローズジャムを取り出し、戸棚から茶葉を引っ張り出しつつ……

麦野「(――ただの男と女でいられたらなら、こんなに気を揉む事もなかったでしょうに)」




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