過去ログ - 新・学園都市第二世代物語
1- 20
700:LX[sage saga]
2012/05/06(日) 22:41:35.05 ID:RpQV+FS/0

「それで、二人は帰ったのか?」

「もう5分早ければかち合ったわね。そんなことになったら、どうなったかわからないけれど」

美琴を寝かしつけた二人は、下の居間で声を潜めて話を続けていた。



よほど精神的に参っていたのであろう、美琴は母・美鈴から離れるのを極度に嫌がった。

美鈴は嫌な顔一つせずに、娘が甘えるままにしていた。

そんな娘を見る父・旅掛は、若干それに不満ではあったが、なんせ今の娘は普通ではないのだからと自分を押さえ、美鈴に全部預けることにした。

美琴は、自分のほほを撫でさする美鈴の手にすがりつき、ようやく安心したかのような微笑みを浮かべると、直ぐに寝入ったのだった。

美鈴は、やつれた娘の寝顔を、痛々しい思いで暫く見つめていた。



「そうだな。そんな話を聞いたら、わしは自分を押さえられたかわからんぞ? 

しかし、そんなこととはな……見損なったな……上条という男」

「そうなんだけど、なんか……引っ掛かるのよね。なんか隠してるって感じで」

「なんだ、あいつの肩を持つのかお前は? 美琴がこんな目に遭ってるのに!」

「ううん、ちょっと違うの。すごく不自然なのよ。何も言わないで、全部自分が悪いの一点張り。それって、細かい事は聞くな、ってことなのよ? 

でもね、あの子はちゃんと相手のひとのことを知ってるらしいのに、ね?」

「ああ、美琴も言ってたな、『あの子に取られた』と。ふむ……そうか、『あの子』と言うからには、結構知ってる女の子ということだな。

なるほどな……余計ショックが大きかったんだろうよ。かわいそうに」

「あなたと会ったときはどうだったの?」

「その事は全く何も言わなかったな。ただ泣きじゃくるだけだったよ。

いや、正直驚いたぞ、幽霊かと思ったくらいだからな。生気はないし、部屋は匂うし。酷いものだったよ」

「そうそう、香水でごまかしてたけど、あの子、ちょっと臭かったわよ? 貴方が?」

「ああ、そうだ。風呂にも入ってないんじゃないか? だから出がけに適当な香水をふり掛けてきたんだが?」

「いやぁね、顔と首だけでも拭いてあげれば随分違うのに……男親ってこれだから……」

「そんなことが出来るくらいなら、わしも苦労せんわ……ようやくのことで連れ出したんだぞ? 寮を出るのだって苦労したしな……。

管理人が気を利かせてくれてな、ここへの外出申請も出してくれたし、それに自分のクルマでゲートまで送ってもらったんだ。

美琴は有名人だから、この状態で玄関から出たら格好の週刊誌のネタになると言われてな……」

「まぁ……それじゃ、後で御礼しなければね。それで?」

「見た通り、パーカーで顔を隠してだな、後部座席に寝かせて寮を出た。さすがにゲートではそうもいかなかったが、まぁ気づかれてはいないと思うがな」

「ホントに大変だったのね、お疲れ様でしたわ、あなた」

「ああ。さすがに参ったわ、あの子がとにかく口を利こうとせんのだからな……」

「え? そうなの?」

「ああ。ずっと、心ここにあらずという顔をしておったな。ゲートの係官もいぶかしむくらいにな。わしの顔をまるで誘拐犯のように見ておったわ。

外へ出て気が緩んだのか、タクシーの中じゃポロポロ泣き出してな、ずっとグスグス言っておって往生したよ……。

だから、ようやく落ち着いたのにと文句を言ったわけだ」                                                                                                        
「そうだったの……。辛かったのね、きっと。かわいそうな美琴……」                                

「まぁ、せめて思う存分寝かせてやろう。今のわしらには、それぐらいしかこの子にしてやれん。情けない話だがな」                                         


美琴は泥のようにぐっすりと眠っていた。

「学園都市、女性能力者の頂点」「レベル5<超能力者>の学園都市第二位」というくびきから逃れられる、唯一の場所。

四面楚歌の中、ようやく辿り着いた「普通の場所」で、「二十歳の御坂美琴」に戻れた彼女は、初めて安息を得たのだった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1293.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice