748:LX[saga sage]
2012/06/03(日) 20:00:21.43 ID:1JS8rMWZ0
言ってしまって、美琴は肩の荷を下ろした気になった。
ああ、言ってしまった。終わったんだ、と。
「おい、ちょっと待てよ」
当麻が言いかけるのを無視して、美琴は言葉を続ける。
「正直言うとね、私、アンタをあの子に取られたくなかった。だから怒った。すっごく悔しかった。あの子に負けたくなかった。
親にも言われたわ。そう、母さんとあんた、何があったか知らないけど、母さんは必死だったわよ?
一生懸命あんたと私の仲を修復しようとして、ね」
「……」
「でも、もういいの。私、あんたとの話、終わりにする。お終い。破談。もうあんた、自由だから。私も自由」
「待て、待ってくれよ、なんで俺の話も聞かないでそう突っ走るんだよ?」
当麻は食い下がるが、冷たい笑いを浮かべた美琴は突き放す。
「何言ってるの? あんた、私の親に言ったでしょ? お父さんと一緒に来て、全部この先のこと、御坂家に判断を預けますって? 違うの?」
一瞬詰まるが、当麻はなおも言葉を続ける。離れてゆく美琴を引き留めようとして。
「それはそうだけど、そうだけどさ、俺の言い訳だって聞いてくれたっていいじゃないか?」
「こんなところで言い訳? ハハ、みっともないわよ? さぁて、アンタ、あの子待ってるから、早く行って上げなさいよ。
あの子をないがしろにしたら、今度こそほんとに酷いからね、覚悟しなさいよね? じゃね」
ぴしゃりと言い切った美琴は、もう用事は済んだとばかりに彼に背を向け、外へと歩き出す。
「ちょっと待てよ、美琴!」
去ろうとした彼女の手を、当麻は右手で掴み、ぐいと美琴を引っ張った。
「ちょっと!? 離しなさいよ、何すんのよ!? 人呼ぶわよ、バカ! あんたとはもうなんでも無いんだから!」
美琴は厳しい顔で当麻を睨み付け、叱りつけるように叫ぶ。
「いいや、離さねぇ! お前が、俺の話を聞くって言うまで絶対に離さねぇからな!」
当麻も負けずに力任せに美琴を抱き寄せるが、彼女は当麻から逃れようと必死にもがき、罵倒する。
「うるさい! 離せ! この嘘つき! 卑怯者! けだもの!」
――― 御坂さん!! 上条さんも何してるんですか!? 二人とも止めなさい! こんなところで! ―――
思わぬ人の声に、二人の動きが止まる。
「初春……さん?」
「初春……どうして、ここに?」
もみ合う二人の前に飛び込んできたのは、初春飾利であった。
「あなた……? お姉様<オリジナル>どうしたのですか、この騒ぎは?」
そこに再び現れた、御坂妹。
「うっさい! なんで戻ってくるのよ! 事の起こりは全部アンタなんだから!」
「え? 御坂さん……? え、双子? あれ……もしかしてそのお腹」
美琴にそっくりな御坂妹、そして誰が見ても妊婦に見える彼女を見た初春は、驚愕する。
「いいから、初春さん、ほら、逃げるわよ!」
時ならぬ初春飾利の登場と、心配になって様子を見に来た御坂妹が現れたことで気が緩んだ当麻の隙をついて、美琴は彼の腕を振り払い、救世主? の初春と共に外へと走り出た。
「美琴!!」 当麻の悲痛な叫びを後に残して。
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