802:LX[saga sage]
2012/07/22(日) 20:44:53.76 ID:xs0nTr/s0
「じゃ、いいわね? 頼んだわよ?
……あ〜あ、あの子たちのことで、あんたにまた借りが出来ちゃったわね……」
終わりの方は殆ど独り言のようであったが、美琴は話を締めくくった。
美琴と当麻は久方ぶりに顔を合わせていた。
科学の街である学園都市において、日本古来の寺社仏閣、あるいはキリスト教における教会、イスラム教におけるモスク等はここ第十二学区に集中して置かれている。
ここ聖オルソラ教会はローマ・カソリックであり、欧米系らしき10数人の中には日本人らしき人の姿はなかった。
二人はそこの小会議室を借りて、話をしていた。
「いや、それは貸し借りとか、そういう話じゃないだろ?」
「いいの。私の気分の問題だし……それから、あんたをかくまってくれてるのは、舞夏のお兄さんの土御門元春……さん、で間違ってないのよね?」
「ああ、そうだけど? 何かあいつに?」
「ちょっとね。で、会ったら伝えて欲しいんだけど、いい?」
「あ、ああ。直接言えないことなのか?」
「詮索無用よ。いい? 『決めた』って言えばわかるから」
美琴はピッと人差し指を立てて当麻の唇に押しつける。
(ん? 機嫌はいい……ってことだよな?)
美琴の機嫌が良いこと自体は、なにも悪くない。でも、いったい何を美琴は「決めた」のだろう?
当然ながら当麻は疑問に思う。
だが、美琴のふっきれたような顔は、そして彼女の目は、その質問を許さないものだった。
「わかった。言っておくよ」
「ありがとう」
「それで、美琴、あのさ……」
「なに?」
「くどいかも知れないけど……未練たらしいって思うだろうけど、俺は、俺はやり直したいんだ。
お前からすりゃ、その、随分と虫のいい話だとは思うんだけど……でも、俺は自分を偽れない。お前を愛してる。お前だけを、だ」
真剣に、美琴の目を見すえて語りかける当麻。
「ありがと。それくらい真剣にやってくれるなら大丈夫だわね」
斜に構え軽く流す美琴。
「バカ野郎! 俺はそんなつもりで言ってるんじゃない! これは本気なんだ! わかってくれ、頼む、本気なんだ! 美琴!」
頭を下げてひたすら許しを請う当麻。
しばらくの沈黙のあと、美琴は立ち上がり、当麻の傍に来ると、身体をかがめて当麻の目を見すえながら小声でささやく。
「本気なの?」
「もちろん」
「……じゃ、抱いて」
美琴の目は笑っていなかった。
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