814:LX[saga sage]
2012/08/05(日) 22:45:13.24 ID:7azhN7K10
「ちょっとあんた、何をひとのこと勝手に決めつけてんのよ? 私、ほんとに知らないわよ?」
怒りの表情の美琴。
「はいはい、わかりました。そういうことにします。お姉様<オリジナル>がそう仰るんですから」
飄々として全く悪びれた素振りも見せない未来。
「アンタさ……言うことにいちいちトゲがあるんだけど? いつからそんなに性格悪くなったのよ?」
「あーぁ、お姉様<オリジナル>にまで言われちゃった……。あのひとにもたまにそう言われますけど」
ぺろっと小さく舌を出してえへへ、と照れ隠しに笑う未来。
「まぁ、さっきもちょろっと言いましたけど、末っ子の私にもいろいろあったということですよ?
……うーん、なんで私の話になっちゃうかな? お姉様<オリジナル>、さすがですね」
「アンタが一人で右往左往してるだけ、って思うんだけどね」
「ひっどーい! ああん、もう、話を戻します!! それで、何があったかはわかりませんけど、お姉様<オリジナル>にしてはこのところ弱気な面が目に付くかなって」
「弱気……? 私が?」
思いもかけない言葉に驚く美琴。
「ええ。あんな事書かれて、昔のお姉様だったら乗り込んで、訂正文やら詫び文くらい出させていたんじゃないですか?
さすがに超電磁砲<レールガン>はぶっ放さないと思いますけれど」
「あんたねぇ……二十歳にもなってまだそんな中二病丸出しな訳ないでしょーが。はぁ、ほんと昔の自分を思い出すといやんなっちゃう」
「おおー、ずいぶんと大人になられたのですね、お姉様<オリジナル>」
へー、意外だ、という顔の未来。
「言ってくれるわね。あんたこそ、なりは昔の私みたいなくせに、中身はやたら大人くさいのはどうかと思うんだけど」
「外見は仕方ないですよ。成り立ちが成り立ちですから。それに中身だって、けっこうお姉様の血をひいて似ているところもあると思いますけれども?」
「はいはい。でもね、育った環境が大きくものを言うからねー。外の世界に出てから、みんな性格に個性出てると思うけれど、あんたもそう思わない?」
「うふふ、そうですね。もともと、私たちはネットワークで結ばれてますから、各個体がそれぞれ好き勝手に性格を選びつつ、お互いの経験を交換して過ごしてきましたけれど、最初に選んだ性格がやはり大きなウェイトを占めてますね。
でも、ほとんどネットワークに接続してこない個体は元々の性格に、その個体の経験のみの経験を積むので、私たちとはずいぶん変わってきているのではないかと思うんですけれど……」
「……あの子、のように?」
「検体番号10032号のことですか? ほーらお姉様<オリジナル>ったら、やっぱり気になるんですね?」
「いちいち突っ込むんじゃないの! あんたたち妹達<シスターズ>の中で、なんだかんだで一番絡んでるからよ。
それに……あの子はね、実際にあいつと闘った唯一の生き残りなのよ? 私と一緒にね?」
あ……
言った後で、しまった、と言う顔になる美琴。「彼女」の前で、わざわざ愛しい人の暗い過去を持ち出してしまった、と。
だが、「彼女」、未来は顔色も変えずに「姉」の言葉に軽く頷くと、美琴にとって初耳の話を始めたのだった。
「そう……ですから、検体番号10032号『だけ』が、今なおあの闘いを夢に見るんですよ。
彼女にとって、絶対の存在である上条さんが、自分のところに来てくれる、自分を見て、自分を叱りつけ、自分を励ましてくれる。
何よりも、『1人の人間としての自分』の存在を認めてくれたひとが、愛するひとがボロボロの自分の傍にやって来て、自分を痛めつけた悪役をやっつけてくれるんですよ?
それって女の子にとって恍惚の一場面ですもん。そんなシーンなら何度だって見たいでしょ?」
美琴は頭を思い切り殴られたように思った。
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