815:LX[saga sage]
2012/08/05(日) 22:52:07.52 ID:7azhN7K10
自分も、あの闘いを夢で見たことがないわけではない。
でも、その内容はと言えば、当麻に成り代わって何故か自分が一方通行<アクセラレータ>を殴りつけている時もあれば、逆に、当麻が倒され、自分も遂に一方通行<アクセラレータ>に殺される……という悪夢もあった。
正直言って、どう逆立ちしても見て楽しい夢ではない。それどころか精神的に疲れる夢の一つである。
最近でこそずっと見ていないが、一時期かなりの頻度で見た為に、彼女は寝不足となり疲労困憊したことがある。
とはいうものの、実はそれをきっかけにして、当麻との仲が進展したのだったけれど……。
それなのに、あの子は、あの恐ろしい記憶を、夢と言う形で何度も再生していたのだと言う。
美琴自身は、当麻より遅れて実験場に着いたくらいだから、あの子とあいつ(一方通行<アクセラレータ>)との実験(たたかい)がどのようなものであったかは知らない。
ただ、思い出したくもないが、数回見たことのある内容からすれば、一方的に彼女は攻められていたに違いない。
あの子は「予定通り」死んで、「実験」は予定通り終了するはずだったのだ。
しかし。
アイツ(上条当麻)が間に合ったことは、アイツがあいつを打ち倒したことは、どっちも奇跡だったのだ。
あの子にとって、アイツが自分を助けに来てくれるシーンは、いわば奇跡の場面。
そしてヒロインは他ならぬ自分。
か弱く、虐げられたお姫様(自分)のところに王子様が現れて、悪人を蹴散らして追い払い、王子様はニッコリと笑って自分の手を取り……
うわぁ、ちょっと、これって典型的な昔話、童話の世界じゃないの?
ラブ・ロマンスの王道よね? 自己陶酔の気もあるけれど……純情(うぶ)よね。ずいぶん可愛いじゃない。
でも、あの子のやったことって、無茶苦茶エグいことだったわよねー……どこが純情なんだか。
全然違う。
誰か、よからぬ入れ知恵したんじゃないのかしら?
「おねーさまー、大丈夫ですかー?」
ふと気が付くと、未来が首をかしげて自分を見つめていた。
「びっくりしちゃったわよ。あんな事、二度と思い出したくないような事なのにね」
そう言う美琴に、苦笑いしながら未来が答える。
「それでですね、一つ重要なことがあるんです。
検体番号10032号は気が付いていないでしょうけれど、彼女が何度もその夢を見た結果、何が起きたと思います?」
「知らないわよ、人の夢なんかで何が起きたのかなんて」
つっけんどんに答えを返す美琴に、いたずらっぽい顔になった未来が含み笑いをしながら答えを言う。
「その夢が何度も私たちのネットワークに流れた結果ですね、特に直接実験に参加しなかったミサカに多いんですけど……」
一旦話を切り、焦らせるかのように間をおいて、未来が言う。
「検体番号10032号のように、上条さんに憧れちゃったミサカが大量に生まれたんですよー、うふふふふふっ♪
まさか彼女も、自分がお気に入りのシーンを見ることで、ライバルを自ら産み出していたとは気づかなかったでしょうね」
あのひとが怖い顔で出てくるから、このミサカは全然見たくないけど、と未来はしぶい顔で話を締めた。
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