833:LX[saga sage]
2012/08/19(日) 21:42:43.77 ID:4tGOQ92R0
ちなみに、このような事例がなぜ公にならなかったのか?
理由は単純で、「ネットワークに流すな」と命令されたからであった。
彼女らの当時の精神年齢は6歳程度であり、よく言えば素直であった。そう言うものだと言われれば、素直にそう信じた。
性の相手にしても、最初こそ意味がわからなかったものの、相手が喜ぶのを見るのは楽しかったし、そのうちに自分も楽しむことを覚えた。
検体番号10033号もその一人であった。
自分の存在価値を見失っていた彼女は、ようやく自分の存在価値が認められるポジションが出来た……と思っていた。
そんなある日、彼女は某国の賓客を迎えることになった。
いつものように彼女は事を始めようとしたのであるが、今回は勝手が違った。
この男は、女をいたぶることで満足を覚える、最悪の相手だった。
所謂SMプレイの場合では、Sは相手の反応を常にチェックしていなければならない。
相手が冷めてしまっては、SMプレイは成り立たない。単に欲望のまま力をふるうのは単なる暴力であり、そのような人間は外道である。
相手には服従せよ、と厳しく言われているものの、こと今回の相手に関しては、彼女は生命の危険を感じた。
なにせ、キスの最中にいきなり首を締め上げられたのである。
意識が遠くなりかける中、必死に彼女は電撃を飛ばし、男の手から脱出することには成功した。
だが、生まれて初めて「自分自身」の肉体に加えられた暴力=首を絞められたこと、「自分自身」が感じた恐怖=死、このために彼女はすくみ、動くことが出来なかった。
恐るべき事に、電撃を受けたはずのこの男はものの数分で立ち上がり、自分に反抗したという理屈でナイフを持ち出した。
まだ思うように動けない彼女は、手の届く範囲にあるものを男に投げつけるのが精一杯。
その姿に男は更に興奮し、彼女にナイフを走らせ、脚と腕に傷を付けた。
流血する彼女の姿を見て、男は服を脱ぎ、全裸になり、さぁこれから思う存分哀れな犠牲者をいたぶろう、としたその時、物音に気づいたSPが部屋に飛び込み、血に濡れたナイフを持つ男に飛びかかった。
彼女の付け人が飛び込んできた。
彼は、無惨な有様の部屋に驚き、血を流しているミサカを見つけると彼女を抱き起こした。
「傷は深くない。大丈夫、直ぐに病院へ」
「はい」
……彼は、彼女の最初の男(ひと)であり、彼女に性技を教え込んだ男でもあり、普段の生活の一切の面倒を見る人間でもあった。
その彼が、羽交い締めにされた男に向かってこう叫んだ。
「うちの『商品』に傷をつけやがったな!? とんでもねぇ野郎だ! ぶっ殺されたいのか!」
――― 私は、ミサカはやっぱり、『商品』なの? ―――
ケガをした為ではなく、その言葉を聞いたショックで、彼女は意識を失った。
検体番号10033号の怪我はそれほど酷いものではなかった。しかし、心の傷は深かった。
――― うちの商品に傷をつけやがったな ―――
元々は「実験動物」だったわけだけれども、高級コールガールになってしまったけれど、「人間」として自分は扱われていると彼女は信じていた。
でも、それは幻想だった。
あの時の一言。
それはあえなく砕け散った。
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