868:LX[saga sage]
2012/09/16(日) 21:25:09.37 ID:XIEedObl0
(ここが、お姉様<オリジナル>の、『家』……)
あのひとに連れられて来た、この家の前で、私は動くことが出来なかった。
逃げだそう、という気持ちと、お姉様<オリジナル>の御両親は、いったいどんな人なのだろうという怖いもの見たさの気持ちがぶつかっていたからだろうか?
――― 私は ―――
お姉様<オリジナル>を裏切った女。
お姉様<オリジナル>の婚約者である上条当麻を寝取った女。
お姉様<オリジナル>から生まれたクローンのくせに。
私は、生まれてくる我が子の為に、何を言われようとも耐え抜こう、生きてゆこうと決意していた。
自分の取った行動に、最後まで責任を取らなければ、そして、その結果生まれてくる我が子を、あのひとの子供を育てるために。
そのはず、だったのに。
お姉様<オリジナル>の御両親に会うのだ、と思っただけで、心に決めたはずのそれは、あっけなく崩れてしまった。
なんと情けないことだろう。
なんと恥ずかしいことだろう。
自分がこんな人間だったとは。
心の中で、言い訳をしている自分が居た。
(だって、知らなかったから)
(お姉様<オリジナル>の家に行くと知っていたら、きっと来なかった)
(せめて一言言ってくれれば心の準備も出来たのに)
(だいたい、あのひとはどうして私をここへ連れてきたのでしょう? そうです。あのひとがいけないのです。まったくもう、いつまで経っても……)
そう、正直に言えば、私は少しあのひとが恨めしい。
私は、築地のマンション暮らしにも慣れたし、それなりに楽しみも見つけていたのに。
私だって、気さくな街の人ともぽつぽつと話をすることもあったのに。
私は、ウィークリーマンションでは一人だったけれど、学園都市の女子寮でも似たようなものだったし、別に気にもしていなかったのに。
身重の自分に危険が迫っている、と言うことに恐れはあったけれど。
でも、何故、よりにもよって「お姉様<オリジナル>」の実家に? まさか、ここで、一緒に? 本当に?
お姉様<オリジナル>は知っているのだろうか?
「いらっしゃい、待ってたわ?」
突然の声に、私は瞬時に身体を引き、無意識のうちにあのひとを盾にして、その主を凝視した。
――― お姉様<オリジナル>に似ている ―――
第一印象は、そうだった。
(このひとが、お姉様<オリジナル>の、お母様? お姉様<オリジナル>はこのひとから、『生まれた』の?)
なぜだろう、私はお姉様<オリジナル>を初めて、羨ましいと思った。
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