874:LX[saga sage]
2012/09/23(日) 21:17:03.49 ID:ZCbdZhPS0
「いい話じゃありませんね」
美鈴が再びグラスにビールを注ぎながら、ため息と共にそうぼやくと、
「いや、この件においては、ある意味幸いだったね。普通はこんな簡単に話は進まないからね。
……とはいえ、そうなると次は日本国内にいる他の妹達<シスターズ>をどうするか、だな」
妻の合いの手に、そう旅掛は答えると、再び当麻の方を向き、
「美鈴に訊いてもらっても良いんだが、君の方が良いと思うのでね、日本国内(こっち)に妹達<シスターズ>は何人いるのか聞いておいてくれるかな?」
と訊ねると、当麻は少し明るい顔で返事を返した。
「わかりました。それで、海外は?」
「おいおい、そんなに一度に出来ないさ。それに、海外には戸籍ってものがないところが多いからね? やり方がみんな違うからそりゃ大変だよ?」
「そう、ですか……あの、僕は貿易商社勤めになるんで、もしかしたらお役に立てることがあるかと思います。是非協力させて下さい」
当麻が真剣な目で旅掛に訴える。
「そうだったな。何かの時に、頼むことがあるかも知れないな」
もちろん旅掛は、彼の就職する貿易商社、サイエンティフィック・インターナショナル・トレーディングがダミーであることにとっくに気が付いていた。
そして、彼が学園都市統括理事会外交委員会の特命事項担当者であることも。
「そこでだ、上条くん、君にもう一度確認しておきたいのだが」 旅掛が当麻を見すえる。
「はい」 当麻も旅掛を真っ直ぐに見る。
「昨日、美琴から話があった。君と結婚することを決めたと。君は?」
当麻はその瞬間、今日の美琴の全てを理解した。
明日の、妹達<シスターズ>への報告会、いや最後通牒の話を聞いても、本当だとは思えなかった。
終わったら、「ああするしかなかったから、ゴメン。この話はなかったことにして」と話を翻されるのではないかと不安だった。
<やさしく、して?>
カチカチに緊張して、震えていた美琴。
<じゃ、明日、ね>
事後、恥ずかしさか、気まずさか、二人はろくすっぽ話もしないまま別れ、打ち合わせの通り、彼は御坂妹を連れてここに来たのだった。
当麻には一抹の不安があった、美琴と結ばれても。
だが、これでその疑念も晴れた。
当麻は旅掛の目を見つめて、そして頭を下げて答えた。
「はい。間違いありません。僕は彼女と結婚することを約束しました。彼女が大学を卒業した後ですが」
「ふむ。では聞こう。あの子、御坂妹と言っている、あのクローンの子はどうする? そして、そのお腹の子のことは?」
鋭い質問だった。
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