883:LX[saga sage]
2012/09/30(日) 20:17:00.97 ID:21DH1Xvd0
「あの、こんな立派なクルマ、ミサカが乗っても良いのですか?」
「私が乗ってるんだから良いのよ。ほら、気を付けてさっさと乗る!」
ゲートを出た二人は、統括理事会広報委員会が利用しているリムジンに乗りこんだ。
正月は学園都市を離れるお偉いさんも多い為に専用車には空きが出る。
それで、格としては下っ端の美琴でも使うことが出来たのである。
運転席と後部シートとは隔壁で仕切られている他、窓ガラスの色の濃度も任意の濃さに設定出来るため、人目を避けたい二人にはうってつけのクルマであった。
「で、具合はどうなの?」
美琴は、麻美をチラと横目で見た後は素知らぬ顔で前を見ている。
「はい。順調に育っているようです。問題はないとお医者様から言われています」
麻美はそう言うと、そっぽを向く美琴をしばらく見つめ、やがて諦めるかのようにわずかに俯く。
しばらく、沈黙がリムジンの居室を支配する。
道路の継ぎ目の音がかすかに響く。防音・防震が効いているのだ。
「私ね、」
美琴が独り言のように言う。
「はい」
麻美が返事をする。
「あんたの名前、認めてないから」
「え……」
麻美の顔色が変わる。
「私に断りもなく、私の娘につけるはずの名前、勝手に名乗っちゃって、何考えてんのよ? ずうずうしすぎるわよ」
「……そんな」
「他の妹達<シスターズ>は、ちゃぁんとそこらへんは理解してくれてたわよ。私の名前の『美琴』をひっくり返した『琴美』は自主規制してたくらいだしさ」
(それは私も知っています。だから)と麻美は心の中で美琴に答えていた。
「ホント信じられない。姉たる私から名前の字を取るのはいいわよ? だけど、その他に、姉の亭主になる男の名前を使うって、どういう神経してんのよ?
どこまで人をバカにすればいいのかしら」
麻美は黙って下を向いている。
「美」という字は、お姉様<オリジナル>のお母様、「美鈴」さんから頂いたものですし、旅掛のお父さまと美鈴お母さまも納得して頂いたのですけれど、とでも答えようものなら、間違いなく電撃が飛んでくること確実だからだ。
自分は発電能力者<エレクトロマスター>の端くれなるがゆえ、ある程度の電撃には耐えられる自信があった。
しかし、お腹の中の子供がそれに耐えられるかは全くもって不明。
彼女はじっと堪え忍ぶしかなかった。
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