884:LX[saga sage]
2012/09/30(日) 20:27:37.02 ID:21DH1Xvd0
「男の子なんだって?」
美琴が今度は麻美を見ながら訊いてきた。
「はい」
「名前はどうするの?」
そう来たか、と彼女は思う。正直、まだ麻美としてはそこまで考えていなかったのだが。
「まだ、決めておりません」
「あっそ。じゃ、これ」
美琴はバッグからメモを出して彼女に渡す。
「それ以外の名前にしてね。そこに書いてある名前は、私の子供のために取っておいて」
麻美はそのメモを見る。
「誠」「麻琴」等の「まこと」、「当也」の「とうや」、「当樹」の「とうき」……
そこには、ずらりと当麻の字をあてた名前が書き出してあった。
(お姉様<オリジナル>、よくぞここまで……恐ろしいくらいの執念ですね)
麻美は小さくため息をついた。
それを聞きとがめた美琴が突っ込んでくる。
「何ため息なんかついてるのよ? 不服でもあるの?」
麻美もさすがにこれにはカチンと来た。だが、お姉様<オリジナル>に逆らっても何も良いことはない。
「いえ、ふと気づいたのですが、お姉様<オリジナル>はあのひとと結婚なさるのでしょう?」
「そうよ? 悪い?」
「いいえ。であれば、やがて生まれて来るであろうお姉様<オリジナル>のお子様は『上条』を名乗ることになりますね?」
「そうね、私も『上条美琴』って名乗るかも」
「であれば、ミサカが『御坂麻美(みさか あさみ)』という名前になったとしても、お姉様<オリジナル>のお嬢様とはかち合わないので、何も問題は起きないのではないでしょうか?」
そう来たか、と美琴は鋭い目で麻美を睨み付ける。
「そういう問題じゃないのよ。気持ちの問題なの。わっかんないかなー……
それによ、私がアイツとよ、万一よ、万に一つよ、アイツと離婚したら? ないとは言えないし。
そうしたら娘に麻美ってつけていたら同じ名前になっちゃうじゃないのよ? アンタ、そんなことも考えていないの?」
すると、麻美はニッコリと笑って美琴に答えた。
「いいえ、その場合でも大丈夫です。万が一、お姉様<オリジナル>があのひとと離婚された場合には、このミサカがあの人の下にお嫁に参ります。
そうすれば、このミサカは『上条麻美』になりますし、お姉様<オリジナル>のお嬢様は『御坂麻美』になりますからやはり問題はないかと」
言い終わると御坂妹はお腹を優しく抱き、窓の外を見る。
美琴は唇を振るわせて麻美を睨み付け、黙りこむしかなかった。
美琴が娘を当麻に残した場合、あるいは娘に『上条』姓を残した場合はかち合うが、美琴の性格からすれば、そのどちらもないだろうというのが御坂麻美の読みであった。
そして、美琴の反応は彼女の予想通りだった。
リムジンは冥土返しの病院へと、正月の人気のない道を走って行く……
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