898:LX[saga sage]
2012/10/08(月) 19:34:36.34 ID:vRcZk8Ww0
  
  
 結局、御坂麻美が退院したのは翌日の夜であった。 
  
 実際には昼で今回の測定は終わっていたのだが、人目に付くのを避ける為に夜まで待ったのだった。 
  
 「有り難うございました。新藤先生に宜しくお伝え下さい」 
 「お世話になりました」 
  
 「お気を付けて」 
  
 看護士が2人、見送っていた。 
  
 「お姉様<オリジナル>、今日はあの大きなクルマではないのですね?」 
  
 これくらいがちょうど良いですね、と麻美が言うと 
  
 「なに贅沢言ってんのよ? 今日のだってレクサスだし、私だって普段乗れないのよ?」 
  
 と美琴がビシっと突っ込む。 
  
 「いやぁ、学園都市のレベル5の御坂さんだったら、空いていればいつでもOKですから! こりゃ正月からツイてるぞって、仲間ウチじゃ結構話題になりましたからね」 
  
 「あら、それはどうも有り難う。ちなみに、ドライバーとして、誰をどこからどこに乗せた、なんてことを仲間うちであっても話すことは規定違反なのを御存知ですよね?」 
  
 美琴はやんわりと真綿で首を絞めるが如くドライバーに注意する。 
  
 「す、すいません。失礼しました! 今のこと、内密に御願いします!! すいません!」 
  
 こちらからはドライバーの顔は見えないが、彼の声の調子は思いっきりうわずっている。 
  
 「そうねぇ。スクールバスではもう無人運転が実用化されてるんだし、契約車だって無人運転にしては? という声もあるのよねー」 
  
 あさっての方向を見ながら、美琴が何気ない調子でつぶやく。 
  
 「勘弁して下さい、僕ら無能力者がここで仕事見つけるのって、ホント今大変なんです。絶対に何も言いませんから、御願いです!」 
  
 悲痛な声で、土下座せんばかりの哀願をするドライバーに美琴はふぅと息を吐き、 
  
 「ほらほら、ちゃんと前見て! 男ならしっかりしなさい。安全にお客さんを目的地に運ぶのが仕事でしょ? それ以上でもそれ以下でもないでしょ?」 
  
 「は、はい」 
  
 それっきり彼は黙った。 
  
 「お姉様<オリジナル>、あの」 
  
 麻美が言いかけると、美琴は 
  
 「ごめん、ゲート出てからお話しましょうね」 
  
 ぴしゃり、と美琴はそこで会話を打ち切った。 
  
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