933:LX[saga sage]
2012/12/02(日) 19:26:16.77 ID:fLg29DFl0
「こ、こらっ!? こんなとこで何すんのよっ? やめて、離してよ、バカっ!」
言葉こそきついが、美琴の身体の動きは違う。築地の時のような、思い切り暴れるような勢いは全くない。むしろ、誘うようなその動き。
(よし!)
ここぞ、とばかりに当麻は美琴に向かい合う。
「いろいろあったけど、美琴が一番大事なのは変わってないんだぞ? それだけは信じてくれ。頼む」
彼女の目を見つめて、当麻ははっきりと言う。
「……信じるかどうか、あんたの行動次第なんだからね? 私を安心させてよね」
そう言って、美琴も当麻を見つめる。
「うん。美琴、お前が一番好きだ。愛してる」
美琴は、当麻の真剣な顔を見た。
その目を見て、彼女はふと心にやましさを感じた。
(私って……私って、こんな偉そうなこと、言えるのかしら)
ずっと、ずっと昔から、コイツを追いかけてきた私。
ようやく、ようやく想いがかなった、と思ったのに。
……悲しかった。
……悔しかった。
裏切られた、と思った。
忘れようと思った。
二度と会うまい、と思った。
もう、何もかもあの子にくれてやろうと思った。
でも、出来なかった。
どれも、出来なかった。
やっぱり、諦められなかった。
やっぱり、私は、コイツが、このバカが
――― 好き ―――
そして、先日の、あの、恐ろしい話。
そして、妹達<シスターズ>の存在。
(私は、コイツを利用しようとしてる……私って、なんて、なんて嫌な女なの?)
そんな内面の葛藤を覆い隠すかのように、わずかに微笑みを浮かべ、ほんのりと上気した顔で彼女は言った。
「……もう一回、言ってくれる?」
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