991:LX [saga sage]
2013/01/10(木) 21:46:05.48 ID:1IBHAIL60
そして今日は、あのひとが帰ってくる日。
毎日、指折り数えて待っていた。たった一人の私は、まるで子供みたいに。
そんな日に限って会議と取材が入っている。あのひとを迎えに行くには、時間的にちょっと難しい。ちょっと残念だ。
今日の会議については、あらかじめ資料・データが配布されていた。
内容を確認すると、今回はひとつだけ私の判断ではまずい部分があったので、お姉様<オリジナル>に相談したところ、資料を見たいからこっちに来なさい、と言われた。
かくして私は昨日の夜、生まれて初めて学園都市の外へ出た。
イミグレでの手続きは拍子抜けするほど簡単だった。苦労したミサカたちもいたのだが、この違いは何だろう、考えてみたけれどさっぱりわからない。
お姉さま<オリジナル>は出口で待っていて下さった。
「元気そうね。大変なこと任せちゃってごめんね」
なんとなく身体が丸くなっていたように見えたのは気のせいだろうか。
タクシーに乗り込むと、お姉様<オリジナル>が寿司屋らしき名前を告げると、クルマは走り出した。
ロボットが走っていない街中はとても新鮮だった。
寿司屋は30分ほど走った場所にあった。
中にはいると、不思議な事にどこにも寿司がなく、そもそも皿を動かすコンベアもなかったので、ここは何のお店なのか不安になった。
そんな私をお姉さま<オリジナル>は笑って見ていた。
打ち合わせは、ふすまで仕切られた角の座敷だった。隣には誰もいなかったが、私たちは声を潜めて話をした。
打ち合わせ自体はそれほど長くはかからなかった。
特別に持ち出したメモパッドを開き、パスワードを打ち込んだお姉様<オリジナル>は資料をざっと読み、私の補足説明を聞くと暫く考えた後、3つほどの選択肢を挙げてそれぞれの場合の対処法を私に指示した。
いずれも納得できる答えだったので、今回の討議内容についての対応は自分の頭で十分理解することが出来た。
取材の件については、お姉様<オリジナル>は笑って、私に任せると仰った。
海外出張に出ているあのひとのことを、お姉さま<オリジナル>は驚くほど詳しく知っていた。
「だって、殆ど毎日連絡してるもの」
そうなんだ……私には2回しかなかった。「無事着いたから」と「明日戻るよ」という簡単なものだけ。
それでも十分嬉しかったのに。ああ、聞かなければ良かった。悲しくなっただけだった……。
「ま、帰ってきたら文句のひとつでも言ったげなさいな」
そして、お姉さま<オリジナル>は最後に厳しい顔で私にこう仰ったのだ。
「もう一度言っとくけど、子供作るようなマネだけは止めてね。そうなったらあんた、外すから」
わかってます、そんなこと。
二度も言わないでください、尊敬するお姉さま<オリジナル>……。
あー、嫌な事を思い出してしまった。
「上条委員? 5分前ですが何かありましたか?」
「秘書・琴子」から確認メッセージが届いた。いけない、こんなことでは。
お姉さま<オリジナル>に笑われちゃう。
「いえ、大丈夫よ。ありがとう、琴子」
今日は「美子」は休みで、代わりに「琴子」が出ている設定なのだ。いいなぁ検体番号19090号は、公にそのままの「自分」で居られて……。
……さてと、仕事だ。「上条美琴」、出陣するわよ!
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