994:LX [saga sage]
2013/01/10(木) 22:17:17.73 ID:1IBHAIL60
「ごめんな。まさかこんな時間かかるとは思ってなかったんだよ」
疲労の色が思い切り濃い、あのひと。
顔を洗ったら、少し落ち着いたと言って、缶ビールを飲む、あのひと。
「そんな、難しいお仕事だったのですか?」
……でも、私の頭の中では、ろくでもない話が、恐ろしい内容が渦を巻いていた。
まさか、あのおんな、と?
「うん……契約の中にまずいことがあってね、えらく怒られた。何故そこで抗議してこなかったかって」
「その場でさ、国際電話かけることになって、社長自ら相手とやりあって」
「メールで原稿のやり取り始まって、延々と英作文の添削だぜ、もう死んだ」
あの人は疲労困憊、というように、少しずつ、少しずつ話をしてくれた。
「で、『美子』いや、ごめん、『美琴』さ」
「ううん、いいの……あの、今は『美子(よしこ)』と呼んで下さいませんか?」
他に誰も居ないのだから、お姉様<オリジナル>ではなく、あなたには私を、このミサカの名前で呼んで欲しい。
「そうか? ああ、美子さ、明日は午後からで良いって。半休出してきたから、明日の朝は、一緒に出られないけど、すまん」
そんなこと、どうでもいいのに。でも、やっと私の名前、呼んでくれた。ちょっと、嬉しい♪
「お風呂沸いてますけれど、入りますか?」
「すまん、明日の朝入ることにするよ。悪いな、遅くまで待っててくれたのにゴメン。今日は寝かせてくれ」
お背中、流してあげたかったのにな……ちょっとハプニング、期待したんだけどな……つまんないの。
そのせいではないだろうけれど、あの人は立ち上がって歩きかけたところで足首をひねった。
「痛っ!」
あのひとは身体のバランスを崩してテーブルに肩をぶつけ、そのまま床に沈んだ。
「痛てて…ふ、不幸だ」
あはは、初めてナマで聞いちゃった。
MNW(ミサカ・ネットワーク)でスレタイにもなったことのある、あのひとの口癖。
おっと、笑ってる場合じゃなかった。あのひと、うめいてるじゃない!
「だ、大丈夫ですか?」
私はテーブルからカップやポットが落ちないようずらせて中程に纏めて置き、それからあの人の肩に腕を差し入れ、
「痛てて、美子、そこ痛い」
え、と思った私があのひとのシャツを脱がすと…
あのひとの両肩に、小さな、でもちょっと深そうな「真新しい」切り傷があった。
血止めクリームが塗られてあるので、出血はしていなかったけれど、確かに痛そうな、傷。
両肩に2つずつ…? いや、よく見ると深いのは2つずつ、浅いのが2つずつ、4つずつの8箇所もあった。
そして、蚯蚓腫れのような、摺ったような細い傷も何本か…
なによ、これ?
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