6: ◆oEZLeorcXc[saga sage]
2011/08/17(水) 16:09:40.82 ID:5Lu3WJlC0
  
  
  
 「どうしようかしら」 
  
  
 赤毛の少女――結標淡希は小奇麗な天井を見つめながらぽつりと呟いた。 
  
 誰に聞かせるわけでもない、何を伝えるわけでもない、空虚な言葉。 
 『グループ』という組織の待機部屋<セーフハウス>の一つ、そのリビングにあるソファに彼女は横になっていた。 
  
 正確には『グループ』はつい先ほど正式に解散となったため、もう組織は存在しない上、この部屋も明日の午後には解約される。 
  
  
  
 「……どうすればいいのかしら」 
  
  
 もう一度呟いた。 
  
 自分以外は誰も知る事のない、どんな答えも正解でどんな答えも正解ではない、ただその裏には考える事を投げ出して誰かに縋りたいという願望。 
 いつも通りの仕事着、彼女が形だけ在籍していた霧ヶ丘女学院の青いスカートに金属でできた飾りのベルトとピンク色のインナーとしての布を着ていて、同色の青いブレザーと愛用して履いていたローファー、白のスニーカーソックスは床に脱ぎ捨ててある。 
  
 正確には形だけの在籍ではなく、来月から霧ヶ丘女学院への復学は決定している。 
  
  
  
 今度は何も言わずに一つため息をついた。 
  
  
 学園都市、それどころか彼女の身の回りだけに限らない範囲で『世界』は平和になった。 
 明確に『悪』と呼べる簡単な存在はいなかったが、結果として多くの人間が幸せになれる物語のような結末<ハッピーエンド>は訪れた。 
  
 彼女が関わったのはほんの少し、微々たるものだろうが彼女も歯車の一つとして働いて 
  
 その結果、彼女の世界<学園都市>は平和になった。 
  
  
  
 少なくともいくつのも『暗部』が必要ないくらいには。 
  
  
  
 結標淡希とその人質である仲間達が解放されるされるくらいには。 
  
  
  
 『暗部』を抜けて『学校』に通えと言われるくらいには。 
  
  
  
  
 晴れて自由になった彼女の憂いはただ一つ。 
  
  
  
  
 自分は何をすればいいのだろうか。 
  
  
  
 今の彼女には『目的』がない。 
  
  
 かつて『残骸<レムナント>』と呼ばれるモノを求めた『大きな計画』。 
  
 最近まで『仲間』たちを解放するために行った『グループ』としての様々な仕事。 
  
 そのどちらも今の彼女に必要な事でも目指す『目的』の手段でもない。 
  
  
 もっと昔に求めていた事はもう思い出せない。 
 学園都市の本懐である能力開発など今更する気はないし、そもそもが今日までの『仕事』のおかげで能力は開発するまでもなく向上し、かつて負った忌々しい傷も完治している。 
  
 もしかしたら身体検査<システムスキャン>をすれば『八人目』の椅子が用意されるくらいにはなっているかもしれない。 
  
  
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