576: ◆goBPihY4/o[saga]
2011/09/21(水) 01:43:43.00 ID:XOKLck0zo
「そんなに警戒しなくても、俺はお前を殺す気はねえよ。実験は凍結したんだからな」
「……そうですか。逆恨みで襲いかかって来るかと思いましたが、とミサカは警戒心を顕に後ずさります」
「俺を信用できないのも無理はないか」
「当たり前です、とミサカは強調します」
以前殺していた時のまま、無理やり成長させられたクローンの顔には相変わらず表情が乏しかった。
しかし、確実に変化している。
少なくとも、お前が嫌いだ、という気持ちはその瞳からひしひしと伝わって来たからだ。
彼女は最終信号とは違うのだ。
垣根に命を救われてもいないし、何万回と殺されて来た記憶しかない。
最終信号が笑ってくれるから、不思議とどこか許された気がしていたが、そんなのは幻想だった。
妹達を殺した垣根は、彼女たちにとって敵なのだ。
「久々に会ったっつっても、思い出話なんかする仲じゃねえしな。俺は帰る。じゃあな」
そう言って、垣根は踵を返した。
きっと、さっさと離れてやった方がいい。
謝罪だとか償いだとかは、少女は求めていないだろう。
それより早く立ち去って彼女の視界から消えてやるのが、せめてもの気遣いになるはずだ。
そういうのがただの逃げであると、少年にはまだ分からない。
雨の中一歩踏み出したその時だった。
「待って下さい」
何も言わず彼から離れて行くと思っていたクローンが、垣根に声を掛けた。
「――と、ミサカはあなたを呼び止めます」
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