10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 17:45:11.57 ID:vDKXf2v5o
彼が引き籠もりを始めたのは高一の春だった。入学式から一週間、まだ誰にも名前を覚えられていないような時期に、彼は本棚をドアノブに噛ませた。
そうなったのにはさまざまな要因があったが、結局のところ、彼は新しい環境というものに上手く親和できなかったのだ。
また、溶け込む努力をしなかった、という見方もできるかもしれない。それも的を射ている、と彼自身も思っていた。
引き籠もりを始めた当初は良かった。
毎日のように学校に通い、帰り、眠り、朝起きては学校に向かう。
そういった、繰り返し、焼き増しとしか思えない日々に彼は飽き飽きしていたし、好きなことを好きなだけやっていていいというのは、それだけで心が浮き立つことだった。
中学の同級生たちとも、その頃は連絡を取っていた。皆、特に言いたいこともないようで、彼が「面倒だからやめた」と言うと、「バカじゃないの?」と冗談交じりにいってくれた。
本当に馬鹿だったのだ。
様子がおかしくなったのは夏頃だった。この頃になると、何をやっても楽しく感じなくなった自分に気がつく。
毎日を家の中で過ごし、日を浴びていないせいで肌が病的に白くなっていることに気付いたのも、この頃だった。
このままではさすがにまずい、と彼は思った。けれど、同時に愕然とする。
外に出ることが恐ろしいのだ。
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