過去ログ - 男「だったら俺が悪いのかよ!」
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 18:47:57.39 ID:vDKXf2v5o

 そんな屈折した思考にとらわれながら、彼はそれでも死のうとは思っていなかった。それどころか、どうすればいいかをひたすらに考え続けていた。
 思考が何ももたらさないと知っている人々は、まず行動を起こすことが肝要だと口々に言うが、彼はそう気付くには若く、幼すぎた。

 姉はバイトをすることを勧めた。とにかくなにかをはじめて見てはどうかと言うのだ。
 彼は、それが正論であり、同時に分かりやすい解決にたどり着ける手段だと判断しながらも、働くことを嫌った。
 
 単に面倒だったというのもある。
 二年以上に及ぶ自堕落な生活の末に、彼が時間的な制約を嫌がるのは自然なことだった。ただの怠惰と言えば、それまでの話だが。

 けれど同時に、何かに参加する、というのが、ひどく恐ろしいものに感じられた。
 たとえばアルバイトを始めたとして、その店員には自分よりも年下の者がいるかもしれない。その人物よりも自分が劣っていると気付くのが、何より恐ろしかった。

 この期に及んで彼は、自分が他者よりも劣っているとは考えていなかった。彼の心は、肥大したプライドと強い劣等感の狭間で揺れ動いていた。
 それは常に運動を続けている。自分がここで終わるべきではない傑物だと感じることもあれば、今死んでも誰も気にしないような凡人であるとも感じた。

 いずれにせよ姉の助言を実践するには、彼は精神的に幼すぎた。
 状況を上手く理解できていないというのもあるだろう。山嶺のように高くそびえるプライドを捨ててしまえば、もっと楽に生きる道はあったはずだった。



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